短刀 太阿月山源貞一作(花押)
(たいあがっさんみなもとのさだいちつくる)
昭和五十一年十二月日
(茎棟)畑喜与一所持


Tanto:GassanSadaichi



現代・奈良
人間国宝




刃長:28.8(九寸五分強) 反り:僅か 元幅:2.87 元重ね:0.62 穴1



 平造り、三ッ棟低い。 表梵字に爪付き剣、裏護摩箸の彫り。 鍛え、やや沈み勝ちに詰んだ小板目肌は、細かな地沸を付けて、地鉄良好。 刃文、互の目乱れを主体にした焼き刃は、刃縁に荒沸が付いて、一部地にこぼれて湯走り状を呈し、刃中に砂流しが繁く掛かり、匂い口潤むように明るく冴える。 帽子、湾れ調で先小丸に返る。茎生ぶ、先刃上がり栗尻、鑢目化粧筋違い。 銀に金鍍金二重ハバキ。 時代研磨(細かなヒケ有り)。 白鞘入り。



【コメント】
 貞一は月山昇と言い、貞勝の三男として、明治四十年、大阪市東区(現中央区)鎗屋町(やりやまち)に生まれました。大正七年に祖父初代貞一が没すると、僅か十一歳で父貞勝に付いて、家伝の綾杉伝並びに五ヶ伝を学び始めました。一年先輩の兄弟子には、後の人間国宝高橋貞次がいました。大正十二年、十六歳の時に、初出品、最初期は、『月山貞光』と銘じています。昭和十八年には、父貞勝が没しており、その前後の作に、『貞輝』銘のものが数振り残されています。昭和三十一年、『貴照』へ改銘、昭和四十年には、奈良県桜井市茅原(ちはら)に『月山貞一鍛錬道場』を開設、昭和四十一年に『二代貞一』を襲名、昭和四十二年に『無鑑査』認定、同年から二年連続で『正宗賞』受賞、昭和四十五年に『奈良県無形文化財保持者認定』、昭和四十六年、『人間国宝』に認定されました。門下には三男の貞利(無鑑査)、広島の三上貞直(無鑑査)、福岡の河野貞光、岐阜の二十五代兼房(貞房)を始め、その他多数の門人がいます。平成七年、八十七歳で没。作風は綾杉伝並びに五ヶ伝を巧みにこなしますが、得意としたのは相州伝、彫り物が抜群に上手く、兄弟子高橋貞次と並ぶ名手です。
本作は昭和五十一年、同工六十九歳頃の相州貞宗写し短刀です。貞宗の作は、時代によって造り込みに変化が見られ、鎌倉末期には、無反りの短刀、南北朝期には、寸法が延びて、幅広で、先反りの付いた平脇差しが多く見られます。本作は、鎌倉末期の短刀姿を狙ったものと鑑せられます。寸法九寸五分強、身幅カチッとした三つ棟の造り込みで、寸法、姿、梵字に爪付き剣の彫り物からして、国宝名物の『伏見貞宗』、『寺沢貞宗』辺りに範を取ったものと思われます。やや沈み勝ちに詰んだ小板目肌は良く詰んで、互の目乱れを主体にした焼き刃は、刃縁に光りの強い荒沸が付いて、一部地にこぼれて湯走り状を呈し、刃中に砂流しが繁く掛かり、匂い口潤むように明るく冴えています。彫り物も簡素な意匠ではありますが、ピシッと決まった完璧な作です。
人間国宝月山貞一作、渾身の相州貞宗写し、見事な彫りなど、同工円熟期に於ける技が、遺憾なく示された名品です。












商品番号:L-502 短刀 太阿月山源貞一作(花押) 人間国宝

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