刀 無銘(綾小路)
(あやのこうじ)
Katana:Ayanokohji
古刀・山城 鎌倉中期
特別保存刀剣鑑定書付き
探山先生鞘書き有り
刃長:71.0(二尺三寸四分強) 反り:2.3 元幅:2.84
先幅:1.74 元重ね:0.70 先重ね:0.46 穴2
【コメント】
鎌倉中期、山城国綾小路(無銘)の優美な一振り、同派典型の地刃の出来を存分に示した、古雅味溢れる鎌倉太刀の生ぶ品です。
綾小路一派は、京都四条の綾小路に住した一派と伝えられ、定利がその筆頭鍛冶で、門下には定吉がいます。定吉には国宝一口、重要文化財三口、重要美術品六口あり、その活躍期に付いては、どの古伝書も概ね文永(一二六四~七四年)頃と定め、同時代の来国行と親交が深かったとしています。中には近い出来もありますが、定利の現存作を総合的に判断すると、地刃の出来、造り込みなどは、国行よりもむしろ三条派、五条派、粟田口一派など、いわゆる古京物に近い、如何にも古雅な趣のある作が多く残されています。このようなことを踏まえ、近年では、定利の製作年代を、国行よりも一時代古い、鎌倉前期とするのが妥当であるとの見解が強くなっています。もし両名に接点があるとすれば、定利の最晩年、国行の最初期ということになります。
同派の造り込みは、元先身幅に差があり、切っ先小さめ、反りは深いながらも、先に行くとやや緩やかになる太刀姿が多く、焼き刃は、基本的に刃幅が狭く、潤み勝ちな沸出来の小乱れ、小丁字、小互の目を交え、乱れの間隔が狭く、刃縁に沿って地に小模様の飛び焼き、湯走りが掛かり、部分的には二重刃状を呈し、帽子は掃き掛け、沸崩れが多く、鍛えは、柔らかくネットリとした小板目肌に、杢目、流れ肌、地景交じるなど、兎に角、全てに於いて古調な雰囲気が漂います。
本作は大磨り上げ無銘ながら、寸法二尺三寸四分強、元先身幅に差があり、小切っ先で今なお反り深く、先に行くと反りが緩やかになる太刀姿を示しており、 一見すると鎌倉初期を下らない太刀姿を思わせます。板目に杢、流れ肌交じる柔らかな地鉄は、総じて細やかに肌立ち、地景を交え、鎬寄りには沸映りが立って、鉄色が明るく、総体的に匂い口の潤んだ小丁字乱れ主調の焼き刃は、乱れの間隔が狭く、焼き刃に高低があり、複雑に入り乱れ、刃中金筋、砂流しを配し、地には所々焼き頭に沿って、点状の飛び焼きが見られます。探山先生の鞘書きにも『定利、定吉ら一類の特色を明示する優品也』とあるように、雅やかな太刀姿、地刃の出来からして、綾小路以外には極め難い、典型的な作と言えるでしょう。古京物の優品として、そのコレクションに加えて頂きたい綾小路の鎌倉太刀、この度、特別保存刀剣鑑定書を取得したばかりの貴重な生ぶ品です。