短刀 左行秀
(さのゆきひで)
Tanto:Sano Yukihide
新々刀・土佐 江戸最末期
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:27.2(九寸弱) 反り:0.6 元幅:2.54 元重ね:0.60 穴2
平造り、三つ棟低め。 鍛え、小板目肌総体的に良く詰み、所々流れて強く肌立ち、地沸良く付き、白け心があり、地鉄良好。 刃文、直湾れ調で刃中小互の目足が入って沈み勝ちとなり、刃縁荒沸良く付く。 帽子、直調で荒沸付き、先掃き掛け返る。 茎生ぶ(先を僅かに詰む)、先切り、鑢大筋違い。 銀ハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
行秀は、文化十年、現在の福岡県朝倉市杷木(はき)星丸出身、筑前左文字三十九代目と称し、細川正義門人の清水久義に鍛刀を学びました。
年紀作に見る活躍期は、天保十一年から明治三年まで、現存作の大半は刀で、短刀はまず見ません。晩年は嫡子幾馬と横浜で余生を過ごし、明治二十年、七十五歳で没。
作風は、初期は丁子乱れ風の作もありますが、後期は広直刃調、湾れ調の刃取りに、刃中は互の目足入るもの、沸崩れるものなどが見られるようになります。
本作は同工稀少な短刀、寸法九寸弱、三つ棟でやや反りのある上品なスタイルです。
銘振りが普段のものとは異なり、書体を少し崩した感じで切っています。年紀はありませんが、鏨が初期の頃より弱くなっていますので、後期の作と鑑せられます。
地に少し鍛え肌もありますが、同工後期に見られる一作風を良く示しています。
幕末期、勤皇の雄藩であった土佐藩主山内容堂に『今正宗』と言わしめた名工左行秀、本作はその銘振りと共に貴重な短刀の現存作になるでしょう。