大脇差し(片手打ちの打刀)
備州長船法光為国則作
(びしゅうおさふねのりみつくにのりのためにつくる)
永正九年二月日(一五一二)
Ohwakizashi:Bishu Osafune Norimitsu
古刀・備前 室町後期 拵え付き
薫山先生鞘書き有り
刃長:56.8(一尺八寸七分強) 反り:1.2 元幅:2.91 先幅:1.97 元重ね:0.77 先重ね:0.51 穴2
鎬造り、鎬高め庵棟低い。 表裏共に棒樋に添え樋をハバキ下で角留める。 鍛え、板目に杢目、流れ肌を交え、所々大模様に上品に肌立ち、地沸厚く付き、地景入り、ほのかに映り立ち、地鉄精良。 刃文、互の目丁子乱れ主体に、小乱れ、小互の目、小丁子を交え、刃縁匂い深く小沸良く付いて明るく締まり気味となり、刃中小足、葉入り、金筋、砂流し頻りに掛かる。 帽子、乱れ込んで焼き深く、先僅かに掃き掛け返る。 茎僅かに磨り上げ、先刃上がり栗尻、鑢勝手下がり。 銅に金着せハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
脇差拵え(江戸末期 全長88.5 鞘 焦げ茶に黒文様変わり塗鞘 こじり、銀地容彫、点金象嵌、青貝象嵌、荒波に楓の図 栗型、赤銅魚子地高彫金色絵、龍図 下げ緒、小豆色 柄 親鮫に桑染色柄巻 変わり縁頭、銀地容彫、荒波図 目貫、赤銅容彫色絵、兜采配図 鍔 赤銅石目地菊花形小透金象嵌、菊に扇図)付き。
法光は、末備前鍛冶にあって比較的現存作が少ない刀工、勝光や祐定に並ぶ実力者で、次郎右衛門尉、新左衛門尉、四郎左衛門尉などを名乗る者がいますが、則光や祐光同様、入念作でも俗名を入れないケースがほとんどです。また一般的に則光と区別するため『ほうのりみつ』とも呼ばれます。
本作は、永正年紀入りの法光、僅かに磨り上がっていますが、寸法一尺八寸七分強、やや寸が詰まって先反り付き、茎の短い姿は、室町後期の典型的な片手打ちの打刀スタイルを示しています。
俗名はありませんが、探山先生鞘書きにもあるように、その年紀と銘振り等からして、新左衛門尉法光と鑑せられる貴重な一振り、また地刃の出来、『為国則作』の為打ち銘からしても、注文打ちの入念作であることが一見して分かる優品です。
新左衛門尉法光は、永正(一五〇四~二一)頃の刀工で、丁子主体の乱れ刃には定評があり、同銘多数の法光にあって、最高位と評される名工です。ただ前述したように、俗名入りの作はまず見ません。
板目に杢目、流れ肌を交えた精良な地鉄は、所々大模様に上品に肌立ち、ほのかに映り立ち、互の目丁子乱れ主体の刃は、小乱れ、小互の目、小丁子、尖り風の刃を交えて密に詰まり、刃縁明るく締まり気味となり、刃中小足、葉入り、金筋、砂流し頻りに掛かるなど、地刃良く冴えた素晴らしい出来です。
探山先生鞘書きには、『新左衛門尉法光は、次郎左衛門尉勝光や与三左衛門尉祐定と並ぶ巧者也。出来宜しく、彼の高い技術が窺い知れる優品也。』とあります。
ご覧頂ければお分かりになるかと思いますが、一般的な末備前物と比べて鉄質が違います。茎の状態、鉄味も良く、銘もピシッと切っています。激生ぶ品故に現状未鑑定ですが、特別保存までは楽勝です。
俗名なくとも新左衛門尉法光と分かる名品、外装も江戸期の立派な作が付属しています。
出来の良い上質な末備前物をお求めならば、これを強くお薦め致します。