太刀 来国俊
(らいくにとし)
Tachi:Rai Kunitoshi
古刀・山城 鎌倉末期 最上作
第二十五回重要刀剣指定品
刃長：70.9(二尺三寸四分弱) 反り：2.1 元幅：2.71 先幅：1.84 元重ね：0.70 先重ね：0.45 穴3
鎬造り、鎬高く庵棟低い、中切っ先。 表裏棒樋を掻き通し、添え樋を茎途中で掻き流す。 鍛え、小板目に板目、杢目を交えて良く詰み、所々流れ心に肌立ち、沸映り立ち、地沸厚く付き、地景入り、地鉄良好。 刃文、細直調で、刃縁小沸付いて明るく締まり、刃中小足、葉入り、下半は荒沸付いて匂い深く、烈しく二重刃掛かり、刃中金筋、砂流し掛かる。 帽子、直調で先僅かに掃き掛け小丸に返る。 茎磨り上げ、先栗尻、鑢切り。 銅に金着せ二重ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
【コメント】
来国俊の重要刀剣在銘太刀、優美で気品溢れる鎌倉期の京太刀、同工の本領が存分に発揮された名品です。
来国俊は、国行の子で、同派中最初に『来』の字を冠した刀工、以後皆がこれに倣いました。
徳川美術館所蔵の重要文化財指定の太刀で、『来国俊 正和二二年(一三一五)十月廿三日□□歳七十五』が現存していることから、仁治元年(一二四〇)生まれであることが分かります。
銘に『来』を冠しない『二字国俊』時代の作を合わせると、国宝五口、重要文化財十八口、重要美術品三十七口を数えますが、これは同派中最多であり、名実共に同派の筆頭鍛冶と言えるでしょう。
年紀作に見る活躍期は、弘安元年(一二七八)から元亨元年(一三二一)まで、作風は、二字国俊が身幅しっかりとして、猪首切っ先の勇壮な姿に、丁子の目立つ華やかな乱れを焼くのに対して、来国俊は小切っ先で細身、若しくは中切っ先で尋常な姿で、直刃調に小模様の乱れを交えた温和な出来が多く見られます。刀姿は、同時期の備前物などが腰反りであるのに対し、同派は反りの中心が真ん中にくる京(輪)反りを基本としています。
本作は来国俊の在銘太刀、昭和五十二年(一九七七)、第二十五回の重要刀剣指定品です。
寸法二尺三寸四分弱、京反り深めに付いた上品な太刀姿が何とも優美です。
銘の位置からして四寸程磨り上がっており、元来は二尺八寸近くあったことが分かります。
一番下が生ぶ穴で、その上に比較的鮮明な三字銘が残されています。
年紀はありませんが、その銘振りから元応(一三一九～二一)～元亨(一三二一～二四)頃の晩年作と鑑せられます。
因みに同工が太刀に年紀を切る場合、前述した重要文化財同様、佩裏ではなく、銘の下に続けて切り添えます。これは来国光、備中青江、備前雲類等にも見られます。
小板目に板目、杢目を交えて良く詰んだ地鉄は、所々流れ心に肌立ち、沸映り立ち、細直調の刃文は、上半は刃縁小沸付いて明るく締まり、刃中小足、葉入り、下半は荒沸付いて匂い深く、烈しく二重刃掛かり、刃中金筋、砂流し掛かるなど、 上半と下半で趣が異なる点は見所の一つです。
また鎌倉期の在銘品の場合、無銘極めに比して刀身がやや疲れ心となるのは否めませんが、本作は比較的刃が健やかであることも大きな見所です。
優美で気品に溢れた姿、格調高い地刃の出来など、鎌倉期の京物の美点が存分に示されており、寸法も充分、来国俊の在銘品としても価値のある一振りです。
