脇差し 義光彫同作(延文兼光写し)
(よしみつほりどうさく)
平成三年秋吉祥日
Wakizashi:Yoshimitsu
現代・東京
無鑑査刀匠
図録『大野義光重花丁子の世界』所載品

刃長:35.6(一尺一寸七分強) 反り:0.4 元幅:3.13 元重ね:0.67 穴1


【コメント】
義光は大野三男と言い、昭和二十三年、現在の新潟市西区大野町に生まれました。昭和四十四年、東京へ出て吉原義人、荘二門下に入り、昭和五十年には、新作名刀展に初出品、昭和五十一年に独立し、地元に鍛刀場を設立、昭和五十二年、結婚を機に吉川姓となり、東京に新居を構えました。以後昭和六十二年まで、新作名刀展に於いて、高松宮賞五回など毎年受賞、昭和六十二年六月、無鑑査に認定されました。
備前伝丁子刃の探究とその美しさに於いては他の追随を許さず、世上、『大野丁子』と呼称される華麗な丁子乱れを得意とします。
本作は平成三年、同工四十三歳の頃の作、いわゆる『延文兼光写し』の会心作で、且つ彫り同作の貴重な逸品です。
小板目良く詰んだ精良な地鉄は、刃寄り流れ心の肌を交えて上品に肌立ち、棟寄りに乱れ映り立っています。湾れに小互の目を交えた刃文は、刃縁匂い勝ちに小沸付いて明るく締まって良く冴え、刃中葉、小足が良く入っています。
表裏の彫りは簡素な意匠ですが、力強い鏨運びの貴重な自身彫りです。
本歌の備前兼光には、鎌倉末期から南北朝中期頃まで作が見られますが、南北朝初期頃までは、直刃調に互の目交じり、片落ち互の目を基調とした父景光風を踏襲した作風、南北朝中期になると、寸が延びて大切っ先で身幅広いスタイルに、それまで見られなかった湾れを主体とした小沸出来の刃文を焼くようになります。これは短刀も同様で、特に延文年紀の作にこれが多く見られることから『延文兼光』と呼ばれます。
本作は正に本家に忠実な地刃の出来で、映りの様も見事です。
研ぎは無鑑査藤代興里、ハバキは中村才道、白鞘は広井章久と、その道の名人の手によって、全てビシッと決まっています。
平成三年は、岡山県の林原美術館にて、『大野義光重花丁子の世界』の個展が開催された年ということもあり、作品からは心技体全てに於いての充実振りが伝わってきます。
本作はその個展の出品作であり、図録にも所載された自信作、備前長船鍛冶の最高峰、延文兼光を見事再現した傑出の一振り、大野義光コレクションに是非加えて頂きたい目玉商品です。


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