刀 阿武隈川宗寛造之(泰龍斎宗寛)
(あぶくまがわそうかんこれをつくる)
安政二年八月日(一八五五)
Katana:Abukumagawa Sokan
新々刀・武蔵 江戸最末期 拵え付き
保存刀剣鑑定書及び甲種特別貴重刀剣認定書付き
寒山先生鞘書き有り

刃長:71.1(二尺三寸五分弱) 反り:1.4 元幅:3.27
先幅:2.23 元重ね:0.75 先重ね:0.55 穴1

打ち刀拵え(幕末期 全長104.5 柄長25.5 鞘 黒石目鞘 下げ緒黒 柄 鮫に黒柄巻 縁頭、銘:石黒政近 鉄研磨地、据紋象嵌色絵、馬の図 目貫、赤銅地容彫、龍図 鍔 鉄地丸形据紋象嵌色絵 耳にも唐草金象嵌 小野東風図)付き。

【コメント】
宗寛は、文政初年頃、奥州白川城下を流れる阿武隈川の畔に生まれ、同郷の名工、固山宗次に学び、後に江戸深川箱崎町にも住しました。
初期の頃には『阿武隈川宗寛』と銘じ、生まれ故郷の阿武隈川を姓の如く用いています。嘉永初年頃から下総国古河藩(現茨城県古河市)の抱え工、安政初年頃から『泰龍斎』と号し、安政三、四年からはそれまでの楷書体を改め、独特の隷書体で銘を切っています。
作品は二十代半ば、天保の末年頃から明治三年頃までで、廃刀令以後は作品が見られず、明治十六年に没。
作風は、基本的には匂い出来の互の目丁子を得意としますが、前期は師宗次丁子風で、丁子が腰開きで出入りのある作が多く、後期は焼き頭の比較的揃う互の目丁子の作が多くなり、稀に綺麗な直刃もあります。
また彫りの名手でもあり、自身作の他、師宗次の作に彫りのあるもので出来の良いものは、まず宗寛の手によるものと考えて良いかと思います。また師同様、その斬れ味にも定評があり、山田浅右衛門吉豊(八代)などの截断銘も、まま見受けられます。
銘は『阿武隈川宗寛造之』、『於古河宗寛作之』、『泰龍斎宗寛造之』などと切ります。
本作は安政二年、同工三十代後半頃の作、『阿武隈川宗寛』銘の貴重な一振りです。
寸法二尺三寸五分弱、切っ先やや鋭角に延び心、身幅、重ねしっかりとして均整の取れたスタイルの幕末刀です。
小互の目乱れを主体に、丁子風の刃、尖り風の刃を交えた焼き刃は、刃縁匂い勝ちに小沸付いて締まり、刃中一部金筋、砂流し掛かるなど、地に少し緩みがありますが、同工備前伝の典型的な出来映えと言えるでしょう。
『阿武隈川宗寛』銘は本誌初掲載、年紀も入っているのでコレクション価値も高く、幕末期の外装付きです。固山宗次高弟、泰龍斎宗寛の壮年期佳品です。





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