脇差し 備州長船康光
(びしゅうおさふねやすみつ)
応永廿七年八月日(一四二〇)
Wakizashi:Bishu Osafune Yasumitsu
古刀・備前 室町初期
特別保存刀剣鑑定書付き

刃長:49.8(一尺六寸四分強) 反り:1.3 元幅:2.78
先幅:2.09 元重ね:0.62 先重ね:0.52 穴2


【コメント】
室町初期の応永(一三九四~一四二八)頃は、南北朝争乱期と室町中期以降の戦国期の間に訪れた平和な時期でもあり、長船鍛冶達は、平安、鎌倉期の優雅な名刀を再現しようと試み、後の末備前とはまた異なる品位の高い作を多く残しています。
応永備前の作風は、互の目丁子刃を主体とした華やかな乱れ刃、『応永杢』と呼称される杢目が目立って肌立つ鍛え、直調の映りが多い点などが特徴ですが、中には鎌倉期の長船物、又は青江鍛冶を思わせる穏やかで上品な直刃もあります。
本工の康光は、応永備前鍛冶の代表工、右衛門尉と称し、同時期の盛光、師光と共に『応永の三光』とも呼称され、長船鍛冶中興の祖としても名高い名工です。
本作は寸法一尺六寸四分強、しなやかで上品なスタイルの脇差し、応永年紀入りの典型作優品です。茎が少し荒れ気味ですが、地刃に欠点はありません。
小板目に杢目を交えてやや沈み勝ちに良く詰んだ精良な地鉄は、地色やや黒みを帯び、ほのかに映り立ち、小互の目乱れを主体に、小丁子、角張った刃、小乱れを交えた焼き刃は、所々逆掛かり、刃縁匂い勝ちに小沸付いて明るく締まり、刃中小足、葉良く入る出来です。
応永備前の乱れ刃にあって、やや穏やかな部類の刃調ですが、応永備前筆頭鍛冶、右衛門尉康光の高い技量が良く示されており、地刃健全、長く楽しめる味わい深い逸品です。


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