寸延び短刀(鎧通し風)備前介宗次
(びぜんのすけむねつぐ)
安政七年二月吉日(一八六〇)
Tanto:Bizennosuke Munetsugu
新々刀・武蔵 江戸末期 拵え付き
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:31.0(一尺二分強) 反り:僅かに内反り 元幅:2.61 元重ね:1.19 穴1
【コメント】
宗次は、固山宗兵衛と言い、享和三年、陸奥国白河(現福島県白河市)に生まれ、水心子正秀門下で、丁子刃を得意とした長運斎綱俊門人とされています。
初めは白河藩松平家の抱え工、次いで桑名藩工となりましたが、大半は江戸麻布永坂、飯倉、四谷左門町にて鍛刀し、弘化二年に『備前介』受領、正確な没年は不明ですが、作品は文政後半から明治四年頃まで残っています。
作風は、一貫して備前伝、詰んだ地鉄に匂い深い華やかな丁子刃の美しさは新々刀随一で、『宗次丁子』と呼称されます。また大業物作者としても名高く、試し斬り名人、七代目山田浅右衛門吉利(山田五三郎)らに指導を受け、斬れ味鋭い刀を探求しました。
本作は、安政七年、同工五十八歳頃の作、寸法一尺二分強、重ね1.2㎝弱の分厚い鎧通し風の寸延び短刀、地刃すこぶる健全です。
鎧通しと言えば、通常一尺を超えるものはまず見受けませんので、おそらく特注品でしょう。
これだけ大柄で重量感のある鋭利な刃物で、鎧の隙間から一突きされたら、たまったものじゃありません。
細かな地沸が微塵に敷き詰められた精良な地鉄、匂い深く明るい焼き刃、同工には珍しい直刃出来ですが、刃縁をこのように柔らかく均一に焼くのは至難の業です。
同工の高い技量が窺い知れる逸品、幕末期のオリジナル合口拵え付き、固山宗次コレクションとしては、確実に押さえて下さい。