刀 薩摩官工平正良(伯耆守正幸前銘)
(さつまかんこうたいらのまさよし)
天明五年巳二月(一七八五)
Katana:Satsumakanko Tairano Masayoshi
新々刀・薩摩 江戸後期
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:71.6(二尺三寸六分強) 反り:1.8 元幅:3.25
先幅:2.19 元重ね:0.70 先重ね:0.52 穴1
【コメント】
正幸は、享保十八年、二代正良の子として生まれ、父の跡を継いで三代正良を継承、寛政元年に伯耆守を受領した際に、正良銘を嫡子へ譲り、正幸と改めました。
年紀作に見る活躍期は、明和初年(一七六四~七二)から文化末年(一八〇四~一八)頃まで、文政元年に八十六歳で没。奥元平と共に、新々刀薩摩鍛冶の双璧を成す名工です。
作風は、湾れに互の目、尖り風の刃を交えて、匂い深く、荒沸付き、金筋、砂流し掛かるなど、美濃相州伝とも言うべき、大志津風の作を得意としています。
銘は、『薩州住正良』、『薩摩官工平正良』、『伯耆守平朝臣正幸』などと切ります。
本作は、天明五年(一七八五)、同工五十三歳の頃、伯耆守正幸へ改銘する前の同工前期作に当たります。
寸法二尺三寸六分強、元先身幅、重ねしっかりとして均整の取れた美しいスタイルで、地刃も健全です。
地沸を微塵に厚く敷いた精良な地鉄は、薩摩刀特有の太い地景をふんだんに交えており、刃縁荒沸付いて匂い深く明るく冴えた刃文は、刃中金筋、砂流し掛かり、所々沸崩れ、沸裂け状となるなど、銘を見ずとも薩摩新々刀と分かる出来です。
刃に細かな鍛え肌もありますが、地鉄のきめ細かな美しさ、覇気のある烈しい刃文、茎も綺麗でピシッとしており、寸法も十分、同工前期の自信作です。