小太刀 肥後国八代住赤松太郎兼嗣作
(ひごのくにやつしろじゅうあかまつたろうかねつぐさく)
写清麿 本三枚鍛之
肥後虎 以自家製鉄鍛之
平成二十三年七月吉日(二〇一一)
Kodachi:Higonokuni Yatsushiroju Akamatsu Taro Kanetsugu
現代・熊本
刃長:63.8(二尺一寸一分弱) 反り:2.0 元幅:2.75
先幅:1.45 元重ね:0.64 先重ね:0.36 穴1
【コメント】
兼嗣は、木村兼定と言い、昭和二十六年生まれ、かの有名な赤松三兄弟の長兄であり、赤松太郎一門の棟梁に当たります。
一門は、熊本県八代市にある、『木村日本美術刀剣赤松太郎鍛錬所』にて精力的に活動しており、また近年では、『肥後虎』という真剣新作刀のオーダーメイドブランドを立ち上げるなど、日本刀の啓蒙活動の一翼を担っています。『肥後虎』とは、肥後熊本の戦国武将、加藤清正の異名。
本作は、平成二十三年(二〇一一)、同工六十歳の頃の作、上品な小太刀スタイルの逸品です。
茎に『肥後虎』とありますので、前述したように、完全注文打ち新作刀、源清麿同様に『本三枚鍛え』にて鍛刀した意欲作です。
日本刀は、『折れず、曲がらず、よく斬れる』ことが信条、それを可能にするのが、炭素量が少なくて軟らかい心鉄を、炭素量が高くて硬い皮鉄でくるむという方法です。これは日本刀制作の大きな特徴であり、『本三枚鍛え』の場合、刃に当たる部分に最も硬い刃鉄を用いて、三種類の鋼で鍛錬します。
また本作の場合、『写清麿』と言っても、相伝の烈しい互の目乱れではなく、因州浜部一派を思わせる、匂い出来の小互の目丁子乱れ主体の刃を丹念に焼いています。これは清麿の初期作に見られる作風、『肥後虎』ブランドの注文打ちですので、注文主からそのような指定があったものと思われます。
このような清麿写しもコレクションとしては面白いでしょう。