刀 正弘(大隅掾正弘)(堀川国廣高弟)
(まさひろ)
Katana:Masahiro
新刀・山城 江戸初期
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:74.0(二尺四寸四分強) 反り:1.3 元幅:3.16
先幅:2.24 元重ね:0.62 先重ね:0.48 穴1
【コメント】
大隅掾正弘は、日向国飫肥(おび)、現宮崎県日南市飫肥出身、堀川国廣高弟で甥とも云われています。 同工には、『慶長十一年三月吉日(一六〇六)』年紀の作が三振り(刀、脇差し、短刀が一振りずつ)残されており、これは一門中、最も時代の上がる阿波守在吉(慶長二年作)に次ぐものであることから、その他の門人である出羽大掾国路、越後守国儔、平安城弘幸、和泉守国貞(初代)、河内守国助(初代)、山城守国清等よりも先輩格であることが分かります。
また正弘の作が、一門中僅少なのは、その作風、茎仕立て、銘振り、鑢目等が全て国廣に酷似していることからして、師の晩年には、その代作、代銘を多く行っていたためと考えられています。
銘は、『正弘』、『藤原正廣』、『大隅掾藤原正弘』が大半、慶長十九年に師が没した後は、本国に帰ったと思われ、『日州住』、『日州飫肥住』を添えた銘振りも見られます。
本作は、寸法二尺四寸四分強、反りやや浅め、切っ先やや鋭角に延び、元先身幅の差が少ない勇壮な慶長新刀スタイルを示しています。
板目に杢目、流れ肌を交えてザングリと肌立つ地鉄は、細かな地景繁く入り、直湾れ調で小互の目交じりの刃文は、刃縁小沸付いて匂い深く、刃中葉、小足良く入り、繊細な金筋、砂流し掛かるなど、堀川一門典型の出来を示しており、その中でも、最も師風を踏襲しているのが正弘かと思われます。 仮に本作が鑑定刀なら、大半の方が、『国廣の堀川打ち』と札を入れるでしょう。
現存作が少ない上、刀は長寸が多く、磨り上げられたものも多いため、生ぶ茎、目釘穴一つは貴重、寸法も十分です。
偉大な師を支えた立役者、大隅掾正弘の代表作、堀川一門コレクションとしても絶対に外せない逸品です。