刀 因幡国鳥取住金崎天龍子秀寿作之
(いなばのくにとっとりじゅうかねさきてんりゅうしひでとしこれをつくる)
電光影裡斬春風
昭和辛亥年春吉祥日(昭和四十六年)(一九七一)
祈念 天下泰平 家運隆昌 天命寿楽
Katana:Inabanokuni Tottoriju Kanesaki Tenryushi Hidetoshi
現代・鳥取
刃長:72.3(二尺三寸九分弱) 反り:2.1 元幅:3.57
先幅:3.03 元重ね:0.89 先重ね:0.66 穴1
【コメント】
秀寿は、金崎秀寿と言い、昭和十九年生まれ、鳥取市の出身で、父義一(天日斎助寿)に学び、天龍子と号しました。金崎親子は、水心子正秀、池田一秀の流れを汲む、水心子系門人に当たります。因みに秀寿の名前は、源清麿に心酔していた父が、清麿初期銘の『秀寿』から取ったものです。
作風は、山城、備前、相州、相伝備前の古作を狙ったものが多く、直刃から乱れ刃まで、巧みに鍛えます。
本作は、同工二十七歳の頃の作、長船長義の薙刀直しを写した、同工相伝備前の会心作、寸法二尺三寸九分弱、大切っ先、元幅3.57㎝で重ねも厚い豪壮無比なスタイルです。
互の目乱れを主体とした刃は、刃縁荒沸付いて匂い深く、刃中金筋、砂流し烈しく掛かり、帽子も烈しく乱れ込むなど、覇気溢れる出来映えです。
この地刃の冴えは、地元で採取された印賀鋼を使用したものと鑑せられます。印賀鋼は、お隣の島根県産出羽(いずわ)鋼と並んで『鋼の王』と評される良質な鉄です。
茎に刻まれた『電光影裡(裏)斬春風』とは、いわゆる無常観を意味する仏教思想、禅語の一種、『稲妻がキラッと光る間に、春風を斬るが如く、この世の全ては、長い歴史からすれば、ほんの一瞬そこにあるように見えているだけである。』の意。更に、『祈念 天下泰平 家運隆昌 天命寿楽』ともあるように、お守り刀、守護刀として作られた注文打ち入念作で、同工の代表作と成り得る逸品です。