脇差し 出雲守藤原氏貞
(いずものかみふじわらのうじさだ)
天正八年十一月吉日(一五八〇)
Wakizashi:Izumonokami Fujiwarano Ujisada
古刀・尾張 安土桃山期 拵え付き
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:35.1(一尺一寸六分弱) 反り:僅か 元幅:3.07 元重ね:0.56 穴2
合口拵え(現代昭和頃作 全長50.5 鞘 黒に金張り、茶呂塗鞘 こじり、栗型、鯉口は黒 小柄、赤銅魚子地据紋色絵、牡丹に蝶図下げ緒黒 柄 出し鮫に出し目貫 目貫は赤銅容彫、双蝶図)付き。
【コメント】
氏貞は、本国美濃関、後に尾張へ移住、若狭守氏房門人に当たります。初め兼貞、後に氏貞と改め、天正三年(一五七五)頃に『権少将(ごんしょうしょう)』、天正五年(一五七七)頃に『出雲守』を受領しています。
年紀作に見る活躍期は、永禄六(一五六三)~天正十七年(一五八九)まで、銘は、『兼貞』、『氏貞』、『濃州関住氏貞』、『権少将氏貞』、『尾州名古野住権少将氏貞』、『出雲守藤原氏貞』、『権少将出雲守藤原氏貞』などと切り、二字銘の場合、年紀はありません。
作風は、師風を継承した湾れに互の目交じりの刃文、節刃交じりの美濃直刃を得意としており、濃厚な彫り物はまず見ない美濃系鍛冶にあって、同工だけは倶利伽羅、旗鉾等々、巧みな彫り物を見ます。
また天下人豊臣秀吉が、同工の刀に惚れ込み、『伊勢一国と交換すべし。』と所望した『一国氏貞(重要美術品)』は有名です。
本作は、貴重な天正年紀入り、且つ自身彫りのある佳品、寸法一尺一寸六分弱、三つ棟、勇壮な慶長新刀スタイルの平脇差しで、地刃も健全です。
湾れに互の目交じりの刃文は、刃縁良く沸付いてやや沈み勝ちに締まり、刃中葉、小足入るなど、焼き幅総体的に広く、深みのある刃縁の雰囲気は、大変良く斬れそうです。
旗鉾、梵字、護摩箸などの自身彫りは、同工が得意とする意匠、彫り口も巧みで、刀身の美観を高めています。コレクション価値の高い出雲守氏貞です。