刀 越前為継(無銘)
(えちぜんためつぐ)
Katana:Echizen Tametsugu
古刀・越前 南北朝中期
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:69.8(二尺三寸強) 反り:1.5 元幅:3.15
先幅:2.09 元重ね:0.70 先重ね:0.51 穴2(内1埋)
【コメント】
為継は、通説によると、郷義弘の子で、越中則重に師事したと伝えられる刀工です。また義弘、則重との関連性から、越中国鍛冶であると思われ勝ちですが、実際に押形として残されているのは、『越前国藤原為継』銘の作、これらには『延文二年(一三五七)』、『応安二年(一三六九)』の年紀が入っています。現存品としては、『濃州住藤原為継』銘の作などが僅かにあるのみで、その中に『応安七年(一三七四)』の年紀があることにより、応安二年から同七年の間に美濃に移住したものと考えられています。大和から移住した志津兼氏、同じく越前から移住した金重と共に、美濃鍛冶の源流を成したとされる名工です。
作風は、地に黒みがある北陸物特有の地鉄に、板目に杢目を交えた則重風の鍛え、刃文は湾れ乱れ、互の目乱れ、直刃調に互の目、小互の目を交えるものなどがあり、刃沸強く、ほつれが掛かるなど、北陸風と美濃風が混在した地刃の出来が特徴と言えます。
本作は、寸法二尺三寸強、反りやや浅めで、身幅しっかりとした勇壮なスタイルは、南北朝中期の典型的な姿を示しています。
互の目乱れ主体の刃文は、刃縁荒沸付いて沸崩れ、沸裂け状となり、刃中金筋、砂流し烈しく掛かり、帽子も同様に烈しく掃き掛けています。地にも多種の形状の湯走り頻りに掛かるなど、とにかく地刃の沸の烈しい働きは見応え十分、凄まじいものがあります。
地に少し鍛え肌もありますが、焼き刃は元から先まで染みるような箇所は皆無、郷義弘、越中則重の技を美濃に伝えた越前為継の魅力的な逸品です。