脇差し 龍王子源貞次鍛彫之(花押)(高橋貞次)
(りゅうおうじみなもとのさだつぐ)
皇紀二千六百二二年八月吉祥日(昭和十九)(一九四四)
Wakizashi:Ryuouji Minamotono Sadatsugu
現代・愛媛
人間国宝
特別保存刀剣鑑定書付き
専用二重桐箱付き
刃長:34.5(一尺一寸四分弱) 反り:0.4 元幅:4.12 元重ね:0.83 穴1
【コメント】
貞次は、高橋金市と言い、明治三十五年、現愛媛県西条市に生まれ、五歳上の兄、徳太郎(高橋義宗)の影響で同じ道を志しました。十五歳で月山貞一、貞勝親子に入門、昭和十一年、松山市石手に鍛錬場を開設、『龍王子』と号しました。戦前は、『新作日本刀展覧会』に於いて、最高名誉賞等、特賞を多数受賞、昭和十七年には、栗原昭秀が定めた『聖代刀匠位列』に於いて、最高位である『神品の列 最上大業 取締役格』にその名を連ねています。昭和三十年には、刀剣界初の快挙である『人間国宝』に認定、昭和四十三年、六十六歳没。
備前伝と相州伝を得意とし、一文字、長船、正宗、貞宗、越前康継等を研究、その写し物も積極的に作りました。その代表作に『小竜景光』、『包丁正宗』写しなどが挙げられます。
彫りの技術は、初代月山貞一(帝室技芸員)、五歳下で同門の二代貞一(人間国宝)に勝るとも劣りません。同工作で濃厚な彫り物がある場合は、大変重宝されます。
本作は、皇紀二千六百四年(昭和十九)(一九四四)、同工四十二歳の頃の作、寸法一尺一寸四分弱、身幅4.12㎝、重ね厚い大鉈の如く豪壮な平脇差しです。
互の目乱れ主体の刃文は、刃縁荒沸良く付き、刃中所々沸裂け、沸崩れとなるなど、南北朝盛期の相州伝上工を狙った覇気あふれる出来映えです。
表には堂々たる真の倶利伽羅、裏には梵字、護摩箸、蓮台の自身彫りがありますが、特に倶利伽羅は見事、名物大倶利伽羅廣光(重要美術品)等に代表される相州彫りの倶利伽羅、越前記内彫りの倶利伽羅等を範にしたと鑑せられる龍の迫力と立体感は凄いです。
鍛刀と彫り共に高い技量を持った名工、現代刀匠に於ける二刀流の先駆けと言えるでしょう。
特に本作の如く濃厚な彫り物が入った作は、愛刀家の方が一度手にしたらまず出て来ません。
刀剣界初の人間国宝、高橋貞次による彫り同作の自信作、専用二重桐箱に収められた素晴らしい逸品です。