短刀 当麻(生ぶ無銘)
(たいま)
Tanto:Taima(Mumei)
古刀・大和 鎌倉最末期 古鞘有り
特別保存刀剣鑑定書付き
薫山及び探山先生鞘書き有り
『鑑刀日々抄(続二)』所載品
刃長:27.3(九寸強) 反り:内反り 元幅:2.67 元重ね:0.66 穴3
【コメント】
当麻一派は、二上山(にじょうざん)の麓、大和国北葛城郡当麻(現奈良県葛城市当麻)にある、当麻寺に従属していた鍛冶集団で、活躍期を鎌倉後期の正応(一二八八~九二年)頃と伝える国行を初祖と し、以降南北朝期に掛けて活躍、門下には友行、友清、友長、友綱、国清、長有俊、有法師などいますが、在銘現存作は極僅かです。
同派の作風は、数少ない在銘品に限った場合、刃縁の喰い違い刃、ほつれなどを度外視すれば、山城物を思わせる穏やかな出来ですが、古来より本阿弥家などによる無銘極めの作には、地景を交えた板目がうねるような地鉄、刃中に煌めく金筋など、地刃の沸の働きがすこぶる烈しく、一見相州上工、新藤五国光、国廣、相州行光辺りと見紛うような、相州伝気質の強い作が多く見られるのが大きな特徴です。
本作は、寸法九寸強、冠落とし造り、やや内反りで重ねのしっかりとした短刀、鎌倉最末期の作と鑑せられ、生ぶ無銘ながら、『当麻』の極めが付されています。
古鞘には、昭和五十二年(一九七七)、薫山先生の鞘書きがあり、『鑑刀日々抄』所載品、現在の白鞘には平成二十三年(二〇一一)、探山先生の鞘書きがあります。
板目に杢目を交えたうねるような地鉄は、ほとんど柾目が目立たず、地沸微塵に厚く付き、細かな地景が繁く入り、沸映りが立っています。
細直刃調で腰元のみ大きく湾れを交えた刃文は、刃縁ほつれ、打ちのけ、刃中金筋、砂流し掛かり、帽子は先が火炎風に掃き掛け返っています。
寸法充分、地刃も健全な優品で、冠落とし風の造り込み、薙刀樋と添え樋の雰囲気も大変良いです。
この地刃の鍛え、冴え、刃中のうねるように煌めく金筋等は、並の短刀には見られません。私見ではありますが、一見すると、新藤五国光、若しくはやや寸が延びているので、その子国廣辺りを思わせる素晴らしい作、これは名短刀、強くお勧め致します。