短刀 備州長船住兼光
(びしゅうおさふねじゅうかねみつ)
建武五年七月日(一三三八)
Tanto:Bishu Osafuneju Kanemitsu
古刀・備前 南北朝最初期 最上作 最上大業物
特別保存刀剣鑑定書付き
探山先生鞘書き有り

刃長:25.7(八寸五分弱) 反り:僅か 元幅:2.05 元重ね:0.46 穴2
【コメント】
兼光は、景光の嫡男で孫左衛門と称し、長船正系四代目として備前伝の伝統を継承しつつ、『正宗十哲』にもその名が挙がるように、相州伝を巧みに取り入れた作風、いわゆる相伝備前鍛冶の祖として、長船長義と双璧を成す名工で、重要文化財十二口、重要美術品十六口を数え、名だたる長船鍛冶の中にあって、名実共に最高峰鍛冶です。
年紀作に見る作刀期間は、鎌倉末期の元亨(一三二一~二四)から南北朝中期の貞治(一三六二~六八)頃までとしています。
作風は、鎌倉末期から南北朝前期の康永(一三四二~四五)頃までは、太刀、短刀共に姿尋常で、刃文は直刃調に互の目、角互の目、片落ち互の目を主体に焼き、総体的に刃が逆掛かるなど、父景光の技を踏襲した出来が多く見られます。それ以降、貞和(一三四五~五〇)、観応(一三五〇~五二)辺りからは太刀、短刀共に姿も大柄となり、それまで見られなかった湾れ主調の刃文も見られるようになります。
本作は、長船兼光の在銘建武年紀入りの貴重な現存作、寸法八寸五分弱、身幅の割に寸が延び、重ね薄め、僅かに先反り付き、茎が振り袖形となるなど、何とも上品な短刀です。
小板目に板目、所々流れ肌を交えて良く詰んだ精良な地鉄、小互の目乱れを主体にやや角張った刃を交えた焼き刃は、刃縁匂い勝ちに小沸付いて明るく締まり、所々やや潤み、刃中小互の目足、葉入り、物打ち付近から切っ先に掛けて、刃縁をかすめるように直調の映りが見られます。
探山先生鞘書きには、『本作は、兼の字形が、同工の前期から後期への過渡期の崩しを見せる点が注目され、地刃はこの期の典型を示し、特に良く練られた精妙なる地鉄が称揚される優品也。』とあるように、同工は、『兼』の字体が、前期と後期で変化するのですが、本作は丁度その中間的な字体となっており、大変貴重な銘振りであることが分かります。
スタイル、作風は、父景光を踏襲しており、鉄の美しさには目を見張るものがあります。また、やや振り袖風となった茎に、銘がピシッとして鮮明に残っていることは、何とも喜ばしいことです。
金無垢二重の台附きハバキも重厚感たっぷりで、ズシンと重いです。
備前長船コレクションには是非とも加えて頂きたい逸品、大変魅力的な兼光短刀です。




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