脇差し 肥後大掾貞国
(ひごだいじょうさだくに)
Wakizashi:Higodaijo Sadakuni
新刀・越前 江戸初期 拵え付き
第十九回重要刀剣指定品
探山先生鞘書き有り
『新刀大鑑』所載品

刃長:31.2(一尺三分弱) 反り:0.2 元幅:2.93 元重ね:0.68 穴1

合口拵え(全長48 江戸後期 鞘 焦げ茶石目地に三本と五本の横縞艶焦げ茶塗 こじり、桑形、四分一魚子地高彫金象嵌、桐花の図 栗型、鯉口、瓦金も同図同作 飾り金具、四分一容彫色絵、駱駝の図 小柄、銘就方花押 四分一魚子地容彫金色絵、桐花に鳳凰図 下げ緒焦げ茶 柄 堅木 縁頭、こじり等と同作同図 目貫、四分一地金色絵、獅子の図 目釘赤銅魚子地、ネジ式)付き。

【コメント】
肥後大掾貞国の重要刀剣、初代越前康継高弟、慶長新刀平脇差し、『新刀大鑑』所載の同工代表作です。
肥後大掾貞国は、江戸期以降の刀剣書及び銘鑑にもその出自等の記載が殆どなく、詳細は不明です。一時、『肥後大掾藤原下坂』などと切る初代康継の初期銘と同じ受領銘であったことから、同人説も存在しましたが、今日では康継と最も近しい関係にあった高弟で、下坂一派の代表工として解釈するのが通説となっています。
その活躍期に付いては、『肥後大掾藤原貞国 慶長十二二年八月日(一六〇九)』の年紀入り短刀が唯一現存しており、大凡の活躍期を窺い知ることが出来ます。
作風は、康継風の作もありますが、黒みを帯びた杢目交じりの越前地鉄は少なく、
概ね明るく細やかに詰んだもの、板目が流れたものが大半で、刃文は直刃調でほつれ交じり、刃中小足入る穏やかな作が多く見られます。極稀に烈しい丁子乱れ(第三十六回重要)(一尺三寸弱の平脇差し)、尖り刃交じりの小互の目乱れ(第二十六回重要)(一尺六分強の片切り刃脇差し)などもあります。
江戸初期は、堀川物、越前新刀、相模守政常などに代表されるように、平作り、片切り刃の脇差しが多く見られますが、同工も脇差しの多い刀工です。
また同工は彫り物を以て名高く、倶利伽羅、不動、梅樹、竹樹等々、康継一派の記内彫りに代表される越前彫りの特徴が顕著な彫り物を得意としています。
同工唯一の重要美術品の片切り刃脇差し(寸法一尺)には、表櫃内に真の倶利伽羅浮き彫り、裏には梅樹彫り、前述の重要刀剣にも全て彫り物があります。
銘は『肥後大掾藤原貞国』、『肥後大掾貞国』などと切ります。
本作は昭和四十五年(一九七〇)、第十九回の重要刀剣指定品で、且つ同工代表作として前述の重要美術品と共に『新刀大鑑』所載品です。
小板目に板目、杢目を交えて良く詰んだ精良な地鉄、湾れ調で小互の目、小湾れ交じりの焼き刃は、刃縁やや沈み勝ちに締まり、ほつれ、二重刃風の沸筋掛かり、刃中小互の目足入り、繊細な金筋、砂流し掛かり、棟、棟寄りに飛び焼き入る出来です。
大鑑にも『古作写し。』とあるように、寸法、三つ棟のスタイル、地刃の冴え、沸の煌めきからして、おそらく狙いは相州貞宗辺りにあると思われ、新刀重要ですので、地刃の状態は素晴らしいものがあり、研ぎも抜群です。金着せ二重ハバキには、肥後熊本藩主細川家でお馴染みの九曜紋透かしが入っています。
付属の合口拵えは江戸後期作、四分一金具でまとめ、飾り金具にラクダをあしらうなど趣向を凝らした一作です。
初代康継に勝るとも劣らない出色の出来映えを見せる肥後大掾貞国の会心作、同工の技量の高さを確信する素晴らしい新刀重要です。




お買いものガイド
