刀 無銘(伝雲重)
(でんうんじゅう)
Katana:Mumei(Den Unju)
古刀・備前 南北朝中期 良業物
第十一回重要刀剣指定品
探山先生鞘書き有り
刃長:73.2(二尺四寸二分弱) 反り:1.6 元幅:3.39
先幅:2.56 元重ね:0.84 先重ね:0.56 穴3
【コメント】
無銘(伝雲重)の重要刀剣、南北朝中期、堂々たる延文貞治姿の豪壮な一振り、雲類代表工による見所多い典型作優品です。
雲生、雲次、雲重らの刀工は、鎌倉末期から南北朝期に掛けて、備前国宇甘(うかい)庄、現在の岡山市北区御津(みつ)付近で鍛刀したことから宇甘派、若しくは『雲類』とも呼ばれ、備前鍛冶ながら、長船鍛冶とはその作風を異にする刀工集団です。
作風は、小板目良く詰み、直刃調で刃縁締まる来風の出来と、直刃に逆掛かる刃を交えた青江風の出来の二様に大別され、地には地斑(じふ)映りと呼ばれる、指で押したような斑(まだら)状の映りが出る作を多く見ますが、刃沸の強い作ではあまり目立ちません。また刃縁に二重刃、帽子が強く掃き掛けるなど、大和風が強く出る作もあります。
刀姿は、雲生、雲次、雲重と時代が下がるに連れて次第に強くなり、南北朝中期の雲重になると、身幅広く切っ先の延びた豪壮なものが多く見られ、その頃最盛期であった相州伝の影響からか、刃沸が更に強くなる傾向があります。
本作は、昭和三十八年(一九六三)、第十一回の重要刀剣指定品、大磨り上げ無銘ながら、『伝雲重』と極められた一振りです。
雲重は、銘鑑等によると、雲生の子とも孫とも云われており、その活躍期は南北朝中期、現存する年紀作には、文和(一三五二~五六)、貞治(一三六二~六八)、応安(一三六八~七五)があります。
寸法二尺四寸二分弱、切っ先強く張って延び心、元先身幅、重ねのがっしりとしたスタイルは、典型的な延文貞治姿を示した堂々たる逸品です。
板目に杢目、流れ肌を交えた地鉄は、所々大模様に上品に肌立ち、地色やや黒み勝ちで地斑状の映り立ち、 地景繁く入り、直湾れ調の刃取りで、小丁子、小互の目、小乱れを交えた焼き刃は、刃縁良く沸付いて匂い深く、ほつれ、二重刃風の沸筋掛かり、刃中小足、葉良く入り、金筋、砂流し掛かる。
如何にも雲類を思わせる典型的な作域を示しており、且つこの強い姿、刃沸の強さからして、雲重以外の極めは考え難いでしょう。
探山先生鞘書きにも、『本作は、備前伝に青江や来気質が混在する作域で、所伝は極めて妥当、且つ健体出色也。』とあります。
寸法十分、重ねは薄めで鎬がぐっと高い造り込み、樋が入っていますが、地刃健全で刀がズシッと重いです。大変見応えのある素晴らしい雲重です。雲類がお好きな方には強くお薦め致します。