刀 無銘(伝当麻)
(でんたいま)
Katana:Mumei(Den Taima)
古刀・大和 鎌倉最末期~南北朝初期
第十七回重要刀剣指定品(昭和四十三年)(一九六八)

刃長:69.5(二尺二寸九分強) 反り:1.4 元幅:3.00
先幅:2.17 元重ね:0.69 先重ね:0.46 穴1
【コメント】
無銘(伝当麻)の重要刀剣、古作大和物然とした出来に、相州伝気質の強い沸の煌めきを加味した、同派無銘極めの白眉と言える優品です。
当麻鍛冶は、二上山(にじょうざん)の麓、現奈良県葛城市当麻に今も残る、当麻寺に従属していた鍛冶集団で、鎌倉末期正応(一二八八~九二)頃と伝える国行を祖とし、以降南北朝期に掛けて活躍、門下には友行、友清、友長、友綱、国清、長有俊、有法師などいますが、在銘現存作は極僅かです。
同派の作風は、数少ない在銘品に限って言えば、良く錬られた板目に流れ肌交じる地鉄、刃文は沸匂い深い直刃調で互の目心を交えるなど、刃縁の食違刃、ほつれなどを度外視すれば、山城物を思わせる穏やかな出来ですが、古来より本阿弥家などによる無銘極めの作には、地景を交えた板目がうねるような地鉄、刃中に煌めく金筋など、地刃の沸がすこぶる烈しく、一見相州上工、新藤五国光、国廣、相州行光辺りと見紛うような、相州伝気質の作が多く見られるのが特徴です。
本作は、昭和四十三年(一九六八)、第十七回の重要刀剣指定品、寸法二尺二寸九分強、反り余り深くなく、身幅しっかりとした勇壮なスタイルは、鎌倉最末期~南北朝初期に掛けての作と鑑せられます。
小板目に板目交じりで良く詰んだ地鉄は、所々流れて、断続的な沸映りほのかに立ち、湾れ調で僅かに小互の目交じりの刃は、刃縁小沸良く付いて匂い深く明るく冴え、僅かに二重刃、ほつれ掛かり、刃中金筋、砂流しが掛かっています。
いわゆる無銘当麻極めの出来というより、数少ない在銘品に繋がるような、地刃共に穏やかで上品な出来です。
同時期で言えば、来国光辺りを思わせますが、帽子、刃縁の二重刃風の働き、刃中の金筋、鎬の高い造り込みなどに、大和物らしさが良く示されています。
ズシンとくる重厚感のある金無垢二重ハバキ付き、地刃共に見応えのある上質で健全な大和物をお求めならば、お薦め致します。



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