短刀 胤吉(堀井胤吉)
(たねよし)
Tanto:Taneyoshi
現代・滋賀 明治初期
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:27.2(九寸弱) 反り:僅か 元幅:2.67 元重ね:0.71 穴1
平造り、重ね厚め庵棟低い。 鍛え、板目肌やや沈み勝ち詰に流れ、地沸良く付き、地鉄良好。 刃文、互の目乱れを主体に角張った刃、小互の目、丁子風の刃を交え、刃縁匂い勝ちに小沸付き、刃中所々金筋、砂流し掛かる。 帽子、湾れ込んで小丸に返る。 茎生ぶ、先栗尻、鑢化粧大筋違い。 銅に金鍍金ハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
胤吉は、堀井吉文と言い、文政四年生まれ、近江国石山、膳所(ぜぜ)付近、現在の滋賀県大津市出身です。天保十四年、二十三歳の頃、大阪へ出て月山貞吉に鍛刀を学び、初期作には地元の石山町から取って『石山吉文』と銘を切っています。嘉永四年、江戸へ出て大慶直胤に学び、安政二年、『胤吉』と改銘、『保伝斎』と号しました。明治二十八年には宮内省御用刀匠を拝命、同三十六年四月、八十三歳にて没。
銘は『近江国胤吉作』、『堀井胤吉作』、『近江国膳所住胤吉作』などと切ります。
作風は、備前伝を得意とし、沸匂いの深い逆丁子、互の目乱れ、直刃の作もあります。
名門堀井家の初代であり、以降二代目胤明、三代目俊秀(秀明)、四代目信秀(俊秀の長男)、分家して胤次(俊秀の次男)、胤匡(胤次の子)と続きます。
本作は寸法九寸弱、重ねしっかりとした短刀、同工備前伝典型作、焼きの深い柔らかな乱れ刃を丹念に焼いた貴重な現存作です。
堀井家初代として、幕末から明治へ不遇の時代を乗り越えて堀井家の命脈を保ち、後世へ繋いだ功労者、宮内省御用刀匠堀井胤吉の備前伝短刀です。