刀 酒井一貫斎繁政彫同作
(さかいいっかんさいしげまさほりどうさく)
当六拾八年 会心之作一
昭和二二十八年九月六日(一九七三)
重代家宝トシテ 為打ち銘有り 専心鍛之
Katana:Sakai Ikkansai Shigemasa
現代・埼玉
無鑑査刀匠
特別保存刀剣鑑定書付き

刃長:78.2(二尺五寸八分強) 反り:1.8 元幅:3.41
先幅:2.44 元重ね:0.80 先重ね:0.63 穴1
鎬造り、鎬高め庵棟低め、中切っ先やや強く張る。 表裏共腰元に、表は梵字と火炎不動、裏は昇り龍の自身彫り有り。 鍛え、板目に杢目、流れ心の肌を交えて良く練られ、地色やや黒み勝ち、地沸厚く付き、地景繁く入り、地鉄概ね精良。 刃文、小互の目乱れ主体で、丁子風の刃、角張った刃を交え、刃縁良く沸付いて匂い深く、刃中小互の目足、葉入り、金筋、砂流し掛かる。 帽子、湾れ込んで焼き深く沸付き、先僅かに掃き掛け返る。 茎生ぶ、先栗尻、鑢切り。 金無垢二重ハバキ(丸に十字紋の透かしと蔦紋の陰刻有り)。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
繁政は、酒井寛と言い、明治三十八年、静岡に生まれ、大正十年、十六歳で東京に出て、笠間一貫斎繁継の門に入りました。昭和七年に独立、師より『繁』の一時を賜り、初銘を繁正、後に繁政と改め、一貫斎と号しました。昭和八年に日本刀鍛錬会に入会、いわゆる靖国刀匠として三年活躍、昭和十六年に陸軍、昭和十九年に海軍受命刀匠に任命され、戦後は埼玉県坂戸市へ移住、昭和五十六年、無鑑査に認定されました。平成八年、九十一歳没。
作風は、戦前の初期作では師風の逆丁子乱れ、戦後は互の目乱れが主体となります。
本作は、昭和四十八年(一九七三)、茎にも刻されているように同工六十八歳の作、寸法二尺五寸八分強、勇壮で重量感のある佳品です。
良く練られた精良な地鉄は、所々細かな地景がうねるように繁く入り、小互の目乱れ主体で、丁子風の刃、角張った刃を交えた焼き刃は、刃中金筋、砂流し掛かっています。
表裏腰元にある火炎不動、昇り龍は、笠間一貫斎一門が得意とする意匠、本作も精巧緻密で見事な自身彫りです。
また茎に『会心之作一』、『専心鍛之』と刻していることから、正に全集中で鍛錬に挑んだ会心の一振りであることが分かります。
ズシンとくる重厚感たっぷりの金無垢二重ハバキ(丸に十字紋の透かしと蔦紋の陰刻あり)は、ハバキのみで62g、これだけでもかなりのお値段です。
無鑑査酒井一貫斎繁政円熟期の代表作、特別保存鑑定書付き、同工は既に亡くなっていますので、今後益々貴重な現存品になるでしょう。



