短刀 (茎棟に金象嵌銘)貞国(肥後大掾)
(さだくに)
(初代康継高弟)
Tanto:Sadakuni
現代・長野
保存刀剣鑑定書付き

刃長:29.1(九寸六分) 反り:なし 元幅:2.70 元重ね:0.80 穴1
切り刃造り、三つ棟低い。 鎬地に真の倶利伽羅を欄間透かし彫りにする。 鍛え、板目、杢目を交えて詰み、所々流れて上品に肌立ち、地沸厚く付き、地景頻りに入り、地鉄良好。 刃文、互の目に湾れ、丁子風の刃を交え、刃縁小沸付いて匂い深く明るく冴え、刃中小互の目足、葉入り、金筋、砂流し掛かる。 帽子、湾れ調で沸匂い付き、先僅かに掃き掛け長く返る。 茎生ぶ、先浅い栗尻、鑢筋違い。 銀に金鍍金二重ハバキ(丸に三つ葵紋透かし入り)。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
肥後大掾貞国は、江戸期以降の刀剣書及び銘鑑にもその出自等の記載が殆どなく、詳細は不明です。また初代康継が、最初期に『肥後大掾藤原下坂』などと切っており、それと同じ受領銘であったことから、一時同人説もありましたが、今日では、康継と最も近しい関係にあった高弟で、下坂一派の代表工として解釈するのが通説となっています。
その活躍期に付いては、『肥後大掾藤原貞国 慶長十二二年八月日(一六〇九)』の年紀入り短刀が唯一現存しており、大凡の活躍期を窺い知ることが出来ます。
作風は、康継風の作もありますが、黒みを帯びた杢目交じりの越前地鉄は少なく、 概ね明るく細やかに詰んだもの、板目が流れたものが大半で、刃は直刃調でほつれ交じり、刃中小足入る穏やかな作が多く見られます。極稀に烈しい丁子乱れなどもあります。
銘は『肥後大掾藤原貞国』、『肥後大掾貞国』などと切ります。
本作は、生ぶ無銘の切り刃造り短刀、面白いのは、やや剥落していますが、茎棟に金象嵌銘で『貞国(肥後大掾)』と極めがあり、鑑定書でもそれを認めています。
寸法九寸六分、三つ棟の造り込み、短刀ながら、重ねが厚く健全なため、刀身がぐっと重いです。
総体的に良く詰んだ地鉄、互の目に湾れ、丁子風の刃を交えた刃は、刃縁明るく冴え、刃中小互の目足、葉入り、金筋、砂流し掛かるなど、出来は如何にも越前下坂一派という感じで、貞国にしては、刃が良く乱れた部類に入るかと思います。
特筆すべきは、腰元にある真の倶利伽羅の欄間透かし彫り、一見して記内彫りと分かる意匠で、経年によって、表面がやや摩耗していますが、逆にそれが味わいとなっており、ぜんたいとして、刀身の美観を高めています。
銀に金鍍金二重ハバキには、将軍家の葵紋透かし入り、大きな欠点なく、地刃の状態も良好です。
肥後大掾貞国の高い技量が窺い知れる、江戸初期の切り刃短刀、康継一派の代表作と成り得る佳品です。


