短刀 備州長船春光(十郎左衛門尉)
(びしゅうおさふねはるみつ)
天正十年八月日(一五八二)
Tanto:Bishu Osafune Harumitsu
古刀・備前 安土桃山期 業物
保存刀剣鑑定書付き
探山先生鞘書き有り

刃長:23.0(七寸六分弱) 反り:僅かに内反り 元幅:2.23 元重ね:0.72 穴2
平造り、庵棟低め。 鍛え、板目、杢目が大模様にうねるように良く練られて肌立ち、地色やや黒み勝ち、地沸厚く付き、地景繁く入り、地鉄良好。 刃文、互の目、湾れ、小互の目、尖り風の刃を交え、刃縁小沸付いて明るく締まり気味、刃中小足、葉良く入り、金筋、砂流し烈しく掛かる。 帽子、焼き深く湾れ込んで先掃き掛け返る。 茎生ぶ、先刃上がり栗尻、鑢勝手下り。 銀に金着せハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
春光は、末備前長船鍛冶代表、十郎左衛門尉を筆頭に、新十郎、左衛門七郎、五郎左衛門尉、孫十郎、次郎左衛門尉などがいます。
本作には俗名が入っていませんが、探山先生鞘書きにもあるように、その特徴的な銘振りと年紀から、十郎左衛門尉春光に間違いない佳品です。
同工は、次郎兵衛尉治光の子と云い、初め『新二郎』と銘じ、天文頃より『十郎左衛門尉』と銘じています。大変長寿であり、天正期まで作品が残っています。一説によると、前期と後期で銘振りが異なるため、永禄頃からは二代とする見解もあります。
本作は、天正十年(一五八二)、同工晩年に当たる貴重な一振りです。寸法七寸六分弱、身幅の割に重ね厚い造り込みは、末備前短刀にまま見られるスタイルです。
板目、杢目が大模様にうねるように良く練られた地鉄は、応永杢(如輪杢)を思わせ、互の目、湾れ、小互の目、尖り風の刃を交えた刃は、刃中小足、葉良く入り、金筋、砂流し烈しく掛かるなど、地刃健全で、大きな欠点なく、銘も鮮明、特別保存までは問題ありません。
末備前物には、俗名なくとも入念作がままありますが、本作はその好例でしょう。
天正十年(一五八二)と言えば、六月二日の『本能寺の変』、そんな年に生まれた長船十郎左衛門尉春光の短刀です。

