刀 備前国住長船与三左衛門尉祐定作
(びぜんのくにじゅうおさふねよさざえもんのじょうすけさだつくる)
永正十五年八月吉日(一五一八年)
Katana:Bizennokuniju Osafune Yosazaemonnojo Sukesada
古刀・備前 室町後期
最上作 大業物 拵え付き
特別保存刀剣鑑定書付き
探山先生鞘書き有り
刃長:67.2(二尺二寸二分弱) 反り:2.2 元幅:2.94 先幅:1.96 元重ね:0.72 先重ね:0.44 穴1
鎬造り、鎬高め庵棟低め、中切っ先。 鍛え、小板目が良く錬られた精良な鍛えは、地沸を厚く敷いて、板目、杢目を交えて、繊細な地景が肌目に沿って現れ、地鉄精良。 刃文、腰開きの互の目丁子乱れを主体とした刃文は、小乱れ、小互の目を随所に交えて華やかに焼き、刃縁匂い勝ちに小沸付き、刃中葉、足が入り、金筋、砂流しが頻りに掛かって、匂い口も明るく締まり気味に良く冴える。 帽子、湾れ込んで沸付き先掃き掛け返る。 茎生ぶ、先栗尻、鑢切り。 銅に金着せ二重ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
打ち刀拵え(江戸後期 全長93.5センチ 鞘 茶と黒の縄目模様 こじり、銀研磨地 鯉口、栗型、四分一研磨地 柄 鮫に時代黒革巻き 頭、縁頭、目貫周り輪、四分一研磨地 出し目貫、赤銅丸形据紋象嵌色絵桔梗菊花図 鍔 赤銅研磨地透、一部金据紋象嵌 耳縄目赤銅覆輪 鍬形菱紋の図)付き。
【コメント】
古刀最上作、末備前鍛冶の最高峰、長船与三左衛門尉祐定の俗名入り、乱れ刃の典型作優品です。
与三左衛門尉祐定は、彦兵衛尉祐定の子で、応仁元年(一四六七年)生まれ、末備前刀工に於いては、祐定を名乗る者が最も多く、古刀期だけで八十余名を数えますが、同工が名実共に末備前鍛冶の最高峰であることは間違いありません。
文亀(一五〇一~〇四年)の始め頃から、天文十年(一五四一年)までの作刀があり、翌十一年、七十六歳で没と伝わります。
作域は幅広く、腰開きの複式互の目乱れ、互の目丁子、直刃、湾れ刃、皆焼刃など多彩ですが、いずれの作に於いても、その高い技量が窺われる名工です。
本作は貴重な俗名入りの入念作、永正十五年は同工五十二歳頃、華やかで地刃美しい優品です。
寸法二尺二寸二分弱、やや寸が詰まって先反りの付いた、しなやかなで上品な姿は、室町後期の典型的な打刀スタイルを示しています。
小板目が良く錬られた精良な地鉄は、地色明るく、地沸を厚く敷いて、随所に板目、杢目が上品なうねりを見せ、繊細な地景が肌目に沿って現れる見事な鍛えです。
腰開きの互の目丁子乱れを主体とした刃文は、小乱れ、小互の目を随所に交えて華やかに焼いており、刃縁匂い勝ちに小沸付き、刃中葉、足が入り、金筋、砂流しが頻りに掛かり、焼き頭に小さな丸い飛び焼き、湯走りを交える同工の手癖も顕著に見られます。
『末備前一』と評されるその技量を存分に発揮した秀逸なる一振り、このレベルの与三左衛門尉は、中々見ません。
付属の時代外装は、斜め刻みの茶黒縄目模様鞘、四分一、赤銅金具で雰囲気良く誂えた渋い作で、内外存分にお楽しみ頂ける素晴らしい逸品です。お薦めです。