太刀 古波平(生ぶ無銘)
(こなみのひら)
Tachi:Ko Naminohira
古刀・薩摩 鎌倉後期
第四十七回重要刀剣指定品
探山先生鞘書き有り
刃長:81.4(二尺六寸九分弱) 反り:2.8 元幅:3.16 先幅:1.88 元重ね:0.70 先重ね:0.44 穴2(内1忍)
鎬造り、鎬高く庵棟尋常、中切っ先やや詰まる。 鍛え、小板目に板目交じり、刃寄り波状に強く流れ、白け映り立ち、地沸微塵に厚く付き、地景良く入り、地鉄良好。 刃文、細直刃調で、刃縁匂い勝ちに小沸付いて締まり気味となり、物打ち付近にほつれ、二重刃目立って掛かる。 帽子、直調で沸付き二重刃掛かり、先掃き掛け返る。 茎生ぶ、先栗尻、鑢不明。 銅に金着せ二重ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
【コメント】
古波平(生ぶ無銘)の重要刀剣太刀、地刃に同派の特色が顕現された優美な大太刀です。
波平一派は、古伝書によると、平安後期、大和から薩摩国谷山郡波平の地に移住したと伝わる正国を祖として、江戸末期まで千年余り続く一大流派です。
正国の子、行安が跡を継いで以降、一派は『行安』或いは『安行』を嫡流的に継承し、且つ門人の多くが、『安』や『行』の字を通字としています。
同派の作と鑑せられるもので、南北朝期を下らないものを『古波平』と呼びます。
一派皆一貫して大和伝を基調とした作風を墨守しており、鎬筋の高い造り込み、総体的に流れて柾心のある鍛えに、白け映りの立つ地鉄、波状に綾杉風の肌合いが出る場合もありますが、月山や下原鍛冶のように、判然とした渦巻き型にはなりません。焼きの低い穏やかな直刃を主体とし、ほつれ、打ちのけ、二重刃の掛かる出来で、刃縁は潤み勝ちとなります。生ぶ姿であれば、焼き刃が刃区上で焼き落としとなるものも多く、室町期の作でも時折見られます。この焼き落としは、同じ九州古典派と呼ばれる三池光世、豊後定秀、行平などにも共通するものがあります。
本作は平成十三年(二〇〇一)、第四十七回の重要刀剣指定品、寸法二尺六寸九分弱、生ぶ無銘の太刀です。
図譜、鞘書きにもあるように、鎌倉後期を下らない作で、切っ先やや詰まり気味、元先身幅の差が大きく、腰反り深いながらも、先の方は反り伏せ気味となるなど、優美な姿を留めています。
小板目に板目交じり、刃寄り波状に強く流れる地鉄は、白け映り立ち、地沸微塵に厚く付き、地景が良く入っています。細直刃調の焼き刃は、刃縁匂い勝ちに小沸付いて締まり気味となり、物打ち付近にほつれ、二重刃が目立って掛かり、帽子にも二重刃掛かって先掃き掛け返るなど、地刃の出来は見紛うことなき古波平の典型を示しています。
図譜には、『地刃に大和伝を基盤とした古波平の特色が良く表出されており、生ぶの太刀姿が優美な一口である。』、探山先生鞘書きには、『姿態優美で地刃もまた古色蒼然としており、同派中の典型且つ優品也。珍々重々。』とあります。
これで在銘なら大変です。何とも味わい深い古波平の生ぶの大太刀です。