刀 無銘(伝長船長義)
（でんおさふねながよし）
Katana:Mumei(Den Osafune Nagayoshi)
古刀・備前 南北朝中期
最上作 大業物 拵え付き
第五十四回重要刀剣指定品
探山先生鞘書き有り
刃長：68.3(二尺二寸五分強) 反り：2.1 元幅：3.17
先幅：2.20 元重ね：0.70 先重ね：0.50 穴3
鎬造り、鎬高庵棟低め、切っ先やや鋭角に延びる。 表裏共に棒樋を茎途中で掻き流す。 鍛え、大板目に杢目、所々流れ心の肌を交えて総体的に良く詰み、地沸微塵に厚く付き、細かな地景繁く入り、地鉄精良。 刃文、互の目乱れを主体とし、丁子風の刃、小互の目、尖り風の刃、大互の目を交え、刃縁良く沸付いて匂い深く明るく冴え、刃中葉、小足入り、金筋、砂流し掛かり、地に飛び焼き交じる。 帽子、表直調、裏乱れ込んで、先掃き掛け焼き詰める。 茎大磨り上げ、先切り、鑢勝手下がり。 銅に金着せハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
上打ち刀拵え(江戸期 全長96 柄長22.6 鞘 黒の呂鞘 小柄笄 銘佐野直信花押 赤銅魚子地据文象嵌金色絵、裏金五月雨鑢 下げ緒黒 柄 親鮫に焦げ茶柄巻 赤銅研磨地金色絵 角に三文字紋図 頭角 目貫金無垢魚子地、重ね角紋図 鍔 赤銅魚子地菊花形猪目透、据文金色絵、五三桐紋散し 切羽も赤銅)付き。
【コメント】
無銘(伝長船長義)の重要刀剣、古刀最上作、『正宗十哲』、相伝備前鍛冶の最高峰による傑出の一振りです。
五郎入道正宗によって完成された相州伝は、南北朝期に入ると全国的に波及し、匂い出来を基本とする備前鍛冶にも大きな影響を及ぼしました。備前鍛冶でありながら、沸の働きを一際強調した作風は『相伝備前』と呼ばれ、その代表工として長船長義、兼光、兼長、盛景らが挙げられますが、その筆頭は紛れもなく長義です。
長義は、一説によると、長船真長(長光の弟)の孫とも伝えられており、兄に長重がいます。『正宗十哲』にもその名を連ねる刀工で、重要文化財五口、重要美術品六口を数えます。
作風は、丁子、互の目、角張る刃、尖り風の刃、腰開きの刃等を主体とした華やかな乱れ刃を得意としますが、その中に起伏のある山形の乱れや耳形の乱れを交えるのが特徴で、特に無銘極め場合は、これらが顕著となった烈しい作が多く見られます。
刃文は匂い出来と、沸出来の二様ありますが、後者は特に相州伝が強調された作風であるため、古来より『備前刀にあって、最も備前離れした刀工は長義也。』と評されます。帽子は、乱れ込んで先尖り風となるものを基本とします。
年紀作に見る活躍期は、貞和六(一三五〇)から康暦二年(一三八〇)まで、南北朝という時代からして、太刀は長寸が多かったため、ほぼ磨り上げとなっており、在銘品は僅少です。しかしながら短刀では八、九寸ぐらいのものが多く、南北朝らしい平身の大柄な作はほとんど見ません。
銘は『備前国長船住長義』、『備州長船住長義』などと大振りに切ります。
本作は平成二十年(二〇〇八)、第五十四回の重要刀剣。大磨り上げ無銘ながら、『伝長義』と極められた名品中の名品です。
寸法二尺二寸五分強、切っ先やや鋭角に延び、身幅、重ねしっかりとした豪壮な刀姿は、南北朝中期の典型的なスタイルを示しています。
樋が入っていますが、持った瞬間にズシッとくる重量感は、新々刀のような感覚で、地刃すこぶる健全です。
大板目に杢目、所々流れ心の肌を交えて良く鍛えられた精良な地鉄、互の目乱れを主体とし焼き刃は、丁子風の刃、小互の目、尖り風の刃、大互の目を交えて明るく冴え渡り、地に湯走り状の飛び焼き交じり、帽子も先が突き上げるようになっています。
図譜には、『本作は南北朝時代中頃の体配を示し、鍛えは板目の肌合いが大きく地模様に優れており、高低のある華やかな乱れは沸が豊富に働くなど、総じて長義の特色が良く明示されている。地刃共に健全であり、肉置きも良い同工極めの優品である。』とあり、探山先生鞘書きにも、『延文貞治型の豪壮なる形態、沸が強く変化に富んだ地刃の働きなど、正に備前伝に相州伝の融合したる態様を示しており、相伝備前の旗頭なる同工と鑑すべきが妥当なる優品也。』とあります。
付属の外装も、大変立派な赤銅金具を使用した一級品です。
白鞘をスッと抜いた時の地刃のツヤ感、沸の煌めき、重量感等々、これは中々立派な長義です。今月の超目玉商品です。
