刀 新藤五(無銘)
(しんとうご)
Katana:Shintougo
古刀・相模 鎌倉末期 最上作 拵え付き
第六十七回重要刀剣指定品
刃長：69.9(二尺三寸一分弱) 反り：2.5 元幅：2.87 先幅：1.60 元重ね：0.65 先重ね：0.45 穴4
鎬造り、鎬尋常庵棟低め、小切っ先。 表裏共にハバキ下で棒樋を丸留めにし、添え樋を掻き流す。 鍛え、板目に杢目、流れ肌を交えて良く詰み、部分的に綾杉風の肌合い現れ、地沸微塵に厚く付き、地景頻りに入り、沸映り立ち、地鉄精良。 刃文、細直刃調で、刃縁良く沸付いてほつれ掛かって明るく、刃中小足入り、金筋、砂流し掛かる。 帽子、浅く湾れ込んで、先小丸に返る。 茎大磨り上げ、先切り、鑢切り。 銀に金着せハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
打ち刀拵え(江戸後期 全長96 柄長22.5 鞘 黒石目地、桔梗紋と木の葉散し図 下げ緒黒 こじり、真鍮地無文 柄 親鮫に黒柄巻 縁赤銅石目地桐紋金象嵌 頭角 目貫、赤銅容彫色絵、雨龍図 鍔 鉄地丸形肉彫透 土手耳文様金布目象嵌 重ね菊花図)付き。
【コメント】
新藤五国光(無銘)の重要刀剣、相州鍛冶の事実上の祖、美しい鍛え、光りの強い刃沸等、その本領を存分に示した典型作、格調高い鎌倉期の名刀です。
本作は大磨り上げ無銘ながら『新藤五』と極められた名品、図譜にも記載がありますが、『新藤五』とは国光を指しています。
令和三年(二〇二一)、第六十七回の重要刀剣指定品で、寸法二尺三寸一分弱、腰反り深く付いて小切っ先に結んだ上品な鎌倉太刀です。
国光は、粟田口国綱の老後の子とも伝わる相州鍛冶で、名物短刀『会津新藤五』など国宝三口、重要文化財十五口、名物短刀『乱(みだれ)新藤五』など重要美術品の八口を数えます。国宝三口を始め、これらの指定品はほぼ短刀のみ、短刀の名手としても名高く、親類関係とされる粟田口藤四郎吉光と双璧を成す鎌倉末期の名工です。更に行光、正宗、則重の三高弟を育成したことは、後世への影響力を考えれば偉大なる功績と言えます。その他門人には、弟とも子とも伝わる国廣、大進房などがいます。
一般的に相州鎌倉鍛冶の草分け的存在と言えば、同工の父とされる粟田口国綱、備前三郎国宗、一文字助真ですが、国光には『鎌倉住人新藤五国光作 永仁元年十月三日(一二九三)』と銘のある重要文化財短刀も残されているように、銘文に居住地、年紀を刻していること、前述した門人の顔ぶれを見ても、相州鍛冶事実上の祖が国光であることは明白です。
活躍期は、永仁(一二九三～九九)から正中(一三二四～二六)頃までとされており、前述の『永仁元年』が同工最古の年紀になります。
作風は、粟田口一派を思わせる小板目が極めて良く詰んだ梨子地風の地鉄に、地景、湯走り、沸映り等、地沸の働きが多彩で、刃文は直刃を得意とし、糸、細、中、広直刃など多様で、ほつれ、金筋、稲妻等、光りの強い刃沸が見所となります。前述の『乱新藤五』だけは、下半が小互の目乱れになっていますが、乱れ刃はこれ以外皆無に等しいかと思います。彫り物は素剣、梵字、護摩箸、腰樋など簡素なものを見ます。
本作は板目に杢目、流れ肌を交えて良く詰んだ最良の地鉄は、部分的に綾杉風の肌合い現れ、地沸微塵に厚く付き、地景頻りに入り、沸映り立ち、 細直刃調の刃文は、刃縁良く沸付いてほつれ掛かって明るく冴え、刃中小足入り、煌めくような金筋、砂流しが頻りに掛かるなど、同工の典型的な作域が存分に示された逸品で、特に地刃の沸の美しさには目を見張るものがあります。加えて刃も元から先まで健やかです。
図譜には、『新藤五国光は、事実上相州伝の創始者であり、短刀の名手として藤四郎吉光と共に双璧とされる。この刀は、同工在銘太刀に良く見られる穏秀な刃文、地景が頻りに働く錬れた鍛えなど、地刃に同工の特色が良く現れており、総じて優れた出来映えである。』とあります。
新藤五国光の刀は、滅多にお目に掛かりません。これで在銘なら大変なことです。
古名刀コレクションには必ず加えて頂きたい名品です。
