刀 無銘(伝左文字)
(でんさもんじ)
Katana:Mumei(Den Samonji)
古刀・筑前 南北朝前期
第六十九回重要刀剣指定品(令和五年)(二〇二三)
探山先生鞘書き有り

刃長:71.4(二尺三寸六分弱) 反り:1.8 元幅:2.83
先幅:2.15 元重ね:0.79 先重ね:0.57 穴3
鎬造り、鎬高く庵棟低い、中切っ先やや延び心。 表裏共に棒樋を茎途中で掻き流す。 鍛え、板目に杢目、流れ肌を交えて良く詰み、地沸微塵に厚く付き、地景繁く入り、鉄良く冴え、ほのかに沸映り立ち、地鉄精良。 刃文、湾れ調の刃取りで、互の目、小互の目交じり、刃縁小沸付いて匂い深く明るく冴え、細かな湯走り掛かり、刃中葉、小足、小互の目足良く入り、金筋、砂流し掛かる。 帽子、湾れ調で沸付き、二重刃掛かり、先尖って掃き掛け深く返る。 茎大磨り上げ、先切り、鑢切り。 白鞘入り。
【コメント】
左文字の重要刀剣、地刃にその特徴が顕現された名品、貴重な刀の現存品、同工極めの白眉、且つ代表作となる名刀です。
左文字は、通称大左と呼ばれ、血統的には西蓮の孫で実阿の子に当たり、銘字の『左』は、左衛門三郎の略とも云われています。
同工が登場するまでの古典的な九州物の作風と言えば、地刃がやや沈んでひなびた(素朴な、田舎風な)直刃調の作風が伝統とされていました。しかしながら、同工によって、地刃共に明るく冴え渡り、地景や金筋の目立つ沸出来の乱れ刃を主体とする相州伝の作風が確立されました。古来より『正宗十哲』の一人にも数えられます。
活躍期は、南北朝前期頃、一門には、安吉、行弘、国弘、吉貞、弘行、弘安、貞吉、吉弘、定行などがおり、これらは総称して『末左』と呼ばれます。
また同工は、藤四郎吉光、新藤五国光らと並び立つ短刀の名人で、短刀のみで『太閤左文字』など国宝二、『小夜左文字』など重要文化財四、重要美術品四振りを数えます。一方で在銘太刀は極めて少なく、国宝名物『江雪左文字』、『筑州(以下切)(第五十回重要刀剣)』の二振りのみです。無銘刀ながら、本阿弥光徳の金象嵌銘入りの旧御物、『長(ちょう)左文字』なども有名です。
銘振りは『左』、『左 筑州住』、『筑州住左』、『左 暦応二年十月(一三三九)』などで、年紀作は全て短刀、その現存作は五振りに満たない程です。
本作は、磨り上げ無銘ながら、『伝左文字』の極めが付された優品、令和五年(二〇二三)、第六十九回の重要刀剣指定品です。
寸法二尺三寸六分弱、切っ先やや鋭角に延び心、元先身幅の差が少なく、重ね厚めの勇壮なスタイル、地刃健全、表裏共に棒樋を掻き流してありますが、刀がぐっと重いです。
板目に杢目、流れ肌を交えて良く詰んだ精良な地鉄は、地沸微塵に厚く付き、地景繁く入り、ほのかに沸映り立ち、湾れ調の刃取りで、互の目、小互の目交じりの刃は、刃縁小沸付いて匂い深く明るく冴え、細かな湯走り掛かり、刃中葉、小足、小互の目足良く入り、金筋、砂流し掛かっています。帽子も湾れ調で沸付き、二重刃掛かり、先尖って掃き掛け返るなど、典型的な左文字帽子となっています。
探山先生鞘書きにも、『身幅広め、重ね厚く、中鋒延びる形状、地景を織り成す晴れやかで潤いのある鍛え、清雅なる趣の小湾れに互の目交じりの刃は、輝く小沸良く付いて刃縁明るく、突き上げて尖った帽子の沸付き一段と強く、更に深く焼き下げて迫力ある状に結ぶなど、同工の特色が明瞭に把握される健体屈指の優品也。』とあります。
うねるような地景を織り成す精強な鍛え、刃沸の強さと明るさ、地刃の冴え、格調の高さは正に左文字、また左文字特有とも言える、帽子の焼きの迫力には痺れます。
ハバキには、五瓜に唐花(ごかにからはな)紋の陰刻、通称『織田木瓜』と呼ばれる大変有名な家紋、これだけの名刀、間違いなく何らかの伝来があるはずですが、まだ辿り着いていません。鋭意調査中に付き、今暫くの猶予を頂きたく思います。
左文字の刀はまず出ません。寸法十分、地刃健全、姿良し、研ぎも良い、これで銘が少しでも残っていたならば、大変なことになるでしょう。
遂に出ました左文字、近年稀に見る状態の良さ、これは絶対に押さえて下さい。強くお薦め致します。






