脇差し　金房新次郎正真
(きんぼうしんじろうまさざね)

Wakizashi:Kinbou Shinjirou Masazane

古刀・大和　室町末期
保存刀剣鑑定書付き

刃長：49.1(一尺六寸二分)　反り：1.1　元幅：3.11　元重ね：0.85　穴1

平造り、重ね厚く庵棟低め。　表裏共に棒樋に添え樋を茎先で掻き流す。　鍛え、板目に杢目、流れ肌を交えて所々肌立ち、地沸良く付き、断続的な映り立ち、地鉄良好。　刃文、広直刃調で小乱れ、小互の目、丁子風の刃を僅かに交え、刃縁匂い勝ちに小沸付いてやや沈み勝ちに締まり、刃中金筋、砂流し掛かる。　帽子、湾れ調で先大丸に深く返る。　茎生ぶ、先刃上り栗尻、鑢切り。　銅に銀着せハバキ。　時代研磨(小サビ有り)。　白鞘入り。　

【コメント】
金房一派は、室町中期以降に始まると云われる大和鍛冶集団、南都の地、現在の奈良で鍛刀し、『金房』を姓の如く用いることからこの呼び名があります。代表工には兵衛尉政次、隼人尉正真、新次郎正真、左衛門尉政定など、『正』、『政』の字を用いる者が多く、業物一派としても有名です。また同派は南都宝蔵院の専属鍛冶であり、同院の僧兵は槍術に長けていたため、槍、薙刀の製作も盛んで、特に政次は、十文字槍の名手としても良く知られています。
作風は、純粋な大和伝直刃に加えて、広直刃調に小足入る出来、湾れ乱れ、末備前、末関風の乱れ刃も見られます。
本作は、新次郎正真の貴重な俗名入り現存作、茎が荒れ気味で銘が判読し難いのが残念ですが、寸法一尺六寸二分、身幅しっかりとして、重ねガシッとした勇壮な平脇差しで、典型的な慶長新刀スタイルを示した佳品です。
出来は、末備前清光の広直刃をイメージして頂ければ良いかと思います。
地刃に僅かに鍛え肌もありますが、地刃健全、この刃縁の雰囲気は良く斬れそうです。金房新次郎正真の自信作、貴重な一振りです。