刀 備中国水田住大与五国重作
(びっちゅうのくにみずたじゅうおおよごくにしげさく)
Katana:Bicchunokuni Mizutaju Ohyogo Kunishige
新刀・備中 江戸初期 良業物
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:73.1(二尺四寸一分) 反り:1.6 元幅:3.25
先幅:2.18 元重ね:0.73 先重ね:0.41 穴1
【コメント】
備中水田派は、室町後期に興った一派で、古青江為次の末流とも伝えており、備中国阿賀(あか)郡水田、現在の岡山県真庭市上水田付近で鍛刀しました。
同派室町期の作を『古水田』と呼び、この頃は末備前、末三原風の作風でしたが、江戸初期、大月与五郎国重の登場により、その作風が一変されます。一般的に『大与五』の略称で呼ばれる同工は、国重の三代目で、三郎兵衛尉国重の子に当たります。寛永(一六二四~四四)頃の刀工で、相州伝を強調した沸出来の覇気溢れる乱れ刃の作風で同派のイメージを一新しました。
同派には長船祐定同様、国重と名乗る刀工が圧倒的に多く、銘鑑によると、幕末明治期まで四~五十余名を数えますが、名実共に『大与五国重』がその筆頭になります。
本作はその大与五国重の貴重な正真現存作、新刀水田の典型を示した相伝の覇気溢れる佳品です。 寸法二尺四寸一分弱、身幅のしっかりとした力感溢れる姿で、地刃の沸が強く、地には黒光りする大粒の荒沸をふんだんに配しており、一部凝結して湯走り状となっています。焼き刃も所々鎬に掛かる程華やかで烈しく、刃中も荒沸がびっしりと付いています。
新刀水田筆頭鍛冶としての力量を存分に示した会心作、ハバキも金着せ二重、地刃健やかで、スカッと冴え渡る素晴らしい大与五国重です。