薙刀直し脇差し 無銘(伝岩戸一文字)
(でんいわといちもんじ)
Wakizashi:Mumei(Den Iwato Ichimonji)
古刀・備前 鎌倉末期 拵え付き
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:45.4(一尺五寸弱) 反り:1.3 元幅:2.50 元重ね:0.67 穴2
半太刀風脇差拵え(幕末期 全長68.5 鞘 焦げ茶変わり塗 小柄、赤銅魚子地高彫色絵、鶴の図 金具類一作 銀研磨地無文 鞘 親鮫に黒柄巻 目貫、図不明 鍔 赤銅研磨地長丸形無文)付き。
【コメント】
鎌倉期に於ける備前鍛冶の大きな流れは、一文字派と長船派の二大流派であり、一文字派は、以降南北朝期に掛けて、福岡、吉岡、片山、岩戸などの地に栄え、多くの名工を輩出しました。
同派が一文字と呼ばれるのは、茎に『一』の字を切ることに因りますが、 銘には『一』のみ場合、『一』の下に個銘を切る場合、個銘のみ場合があります。
中でも鎌倉末期以降に、備前国岩戸庄、現岡山県和気郡和気町岩戸付近にて鍛刀した小規模な一派を岩戸一文字と呼称し、地名からして備前和気鍛冶との関連性も窺える一派です。
銘鑑等によると、その祖を吉氏としていますが、未だ現存作が見当たりません。一派では吉家に、『一備州岩戸庄地頭左衛門尉源吉家』銘で、元徳(一三二九~三一)年紀入りの作が残されていることによって、一派の大凡の活躍期が分かります。
本作は大磨り上げ『伝岩戸一文字』の極めが付された一振り、鎌倉末葉の薙刀を磨り上げて、脇差しの寸法に仕立て直したものです。
南北朝期の豪壮な薙刀に比べ、優しい姿が鎌倉期薙刀の特徴です。
寸法一尺五寸弱、乱れ映り判然と立つ綺麗な地鉄、匂い出来で多種の刃を交えた焼き刃は、刃中も細かに良く働いています。所々少し刃が潤むような箇所もありますが、表の中央付近には、特に刃幅広く、良く冴えた明るい刃が見られます。
鎌倉期の上品な薙刀直し、半太刀風の幕末拵え付属です。