脇差し 粟田口近江守忠綱
(あわたぐちおうみかみただつな)
雕物同作 延宝二二年二月吉日(一六七六)
Wakizashi:Awataguchi Ouminokami Tadatsuna
新刀・摂津 江戸前期 良業物
特別保存刀剣鑑定書付き
佐藤寒山先生鞘書き有り

刃長:44.2(一尺四寸六分) 反り:0.9 元幅:3.56 元重ね:0.79 穴1


【コメント】
二代忠綱は正保元年生まれと云い、初代忠綱の子で、浅井万太夫と言い、初銘を忠国、後に二代忠綱を襲名、父と同様、近江守を受領し、元禄二年からは、『一竿子』を冠するようになります。
活躍期は、延宝から享保まで約五十年に渡り、越前守助廣や井上真改と比肩する、大阪新刀代表鍛冶です。また言わずと知れた彫りの名人で、『一竿子彫り』と呼称されるその彫りは新刀随一です。
茎に『雕物同作』、『雕同作』、『彫物同作』、『彫同作』の切り付け銘のある自身彫りの作は、大変希少価値が高くなります。
銘振りは、初期は『粟田口近江守忠綱』、『一竿子』を冠してからは、『粟田口一竿子忠綱』、『一竿子粟田口忠綱』、『一竿子忠綱』となります。
作風は、初期は初代風の焼き頭の揃った足長丁子乱れ、『一竿子』以降は、互の目乱れ、助廣風濤瀾乱れが多く見られ、直刃もあります。
本作は『一竿子彫り』のある年紀作、寸法一尺四寸六分、三つ棟で身幅3.56㎝の豪壮な平脇差し、延宝四年は同工三十三歳の頃に当たります。
直湾れ調の穏やかな焼き刃は、刃縁明るく、ほつれ、二重刃、食い違い刃などの細やかな働きが豊富に見られます。
茎に『雕物同作』とあるように、表は珠追いの昇り雲龍、裏は梵字に三鈷柄附剣の自身彫りがあります。特に表の雲龍は、これだけ幅広の平地面を一杯に使った大作、常よりもかなり大振りで迫力満点です。平地を広く使うために、敢えて焼き刃を低めに抑えたものと思われます。裏の梵字と三鈷柄附き剣は、同工の典型とも言える意匠です。
地に少し鍛え肌等もありますが、古い登録証は、昭和二十六年三月の東京登録、寒山先生鞘書きによると、本刀は伊勢国桑名藩松平家に伝来した一振りで、『雲龍丸』の号が付されています。
粟田口一竿子忠綱による彫り同作の貴重な逸品、『一竿子彫り』は絶対に見逃せません。



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