生ぶ太刀　国行(来)(底銘)
(くにゆき)

Tachi:Kuniyuki

古刀・山城　鎌倉中期　最上作
特別保存刀剣鑑定書付き
探山先生鞘書き付き　『刀剣日本　第二集』掲載品

刃長：77.2(二尺五寸五分弱)　反り：3.2　元幅：2.96
先幅：1.87　元重ね：0.72　先重ね：0.40　穴1

鎬造り、鎬尋常庵棟低め、中切っ先やや猪首風に詰まる。　鍛え、小板目に板目、杢目交じり、所々流れ心に肌立ち、地沸厚く付き、地斑状の沸映り立ち、地景入り、地鉄良好。　刃文、直湾れ調の刃取りで、小互の目、小丁子、京丁子、小乱れを交え、焼きの間隔詰まり気味となり、刃縁小沸付いて匂い深く、所々潤み、刃中京逆足、小足、葉頻りに入る。　帽子、直調で大丸となり、先僅かに返る。　茎生ぶ、先栗尻、鑢勝手下がり。　銅に金着せ二重ハバキ。　時代研磨。　白鞘入り。

【コメント】
山城国では、鎌倉初期より鎌倉後期に掛けて粟田口派が栄えましたが、鎌倉中期頃より、それに入れ替わる形で登場したのが来派であり、以降南北朝期に掛けて大いに活躍しました。
古伝書等では、国吉の子と伝わる国行を事実上の祖とするのが、現在の通説となっています。
本作は稀少な来国行の生ぶ在銘太刀、穴も一つです。
国行は国宝一口、重要文化財十五口、重要美術品十一口を数える名工、年紀作はありませんが、古伝書等ではその活躍期を鎌倉中期の正元(一二五九～六〇)、文応(一二六〇～六一)頃としています。
姿は、身幅尋常かやや広め、元先身幅の差が少ない太刀姿が大半で、反りは、京(輪)反りを基本としています。帽子は、中切っ先か小切っ先で、詰まって猪首風となるのが大半、地鉄は、小板目詰んだものに加えて、板目が大模様に現れる場合もあり、肌立ち気味で、地沸厚く付いて、沸映りが立ちます。端正な直刃はまずなく、焼き幅広めの直湾れ調で、小丁子、小互の目、角張る刃、小乱れを交えます。初期には、丁子が密に詰まった華やかな作も見られます。
銘は『国行』二字銘のみ、目釘穴の下、或いは『国』の字を目釘穴に掛けて、茎中央に大振りに切ります。字体は一様ではなく三種類程に大別されます。
本作は寸法二尺五寸五分弱、切っ先やや猪首風に詰まり、輪反り深く付いた踏ん張りのある太刀姿で、生ぶ穴の直ぐ下、茎中央に大振りな二字銘があります。
この銘が最も標準的な銘ですが、鑑定書にも『国行(と底銘がある)』の但し書きがあるように、はっきりと見えない点が残念です。
所々流れ心に肌立つ地鉄は、地斑状の沸映り立ち、直湾れ調の刃取りで、小互の目、小丁子、京丁子、小乱れを交えた焼き刃は、焼きの間隔詰まり気味となり、所々潤み、刃中京逆足、小足、葉が頻りに入っています。
探山先生鞘書きにも、『底銘ながら、凛として優美なる生ぶの太刀姿に、同工らしい典型的な地刃の出来を示しており、古様さと雅びさを備えた優品也。』とあります。
物打ちから上の刃が減っており、地に鍛え肌もありますが、来国行の生ぶ在銘太刀で穴一つ、この美しい姿に勝るものはありません。これは見逃せない来国行、『刀剣日本　第二集』掲載品です。