短刀 備州長船近(以下切)(近景)
(びしゅうおさふねちかかげ)
嘉暦三年卯月(以下切)(一三二八)
Tanto:Bishu Osafune Chikakage
古刀・備前 鎌倉末期 拵え付き
特別保存刀剣鑑定書付き

刃長:23.2(七寸七分弱) 反り:僅かに内反り 元幅:2.04 元重ね:0.54 穴2

合口拵え(近代作 全長36.2 鞘柄共に黒石目地 小柄笄、赤銅魚子地据紋金色絵、裏哺金 目貫、容彫金色絵、眼龍図 下げ緒、鉄紺)付き。

【コメント】
近景は長光門人で、年紀作に見る活躍期は文保(一三一七~一九)から貞和(一三四五~五〇)、同門の景光が嘉元(一三〇三~〇六)から建武(一三三四~三六)頃であることから、少し後輩に当たります。
同工の現存品は、国宝一、重要文化財三を含め、ほぼ太刀のみ、兄弟子の景光が短刀名人として数多くの名品を残しているにもかかわらず、短刀は極めて少ないのが特徴です。
作風も自然と景光に似ているのですが、刃沸が景光より強く、鍛えがやや肌立つのが通例です。
銘振りは、文保(一三一七~一九)、元亨(一三二一~二四)頃の初期作は、『備州長船住近景』、嘉暦(一三二六~二九)以降は『備前国長船住近景』がほとんどです。最下限の年紀作に『備前国住長船近景 貞和三年二月日(一三四七)』の太刀があり、末備前鍛冶の如く『長船』を姓若しくは屋号的に用いていることが分かります。これは長船刀工中では最初の例とされます。
本作は僅かに磨り上がっていますが、前述したように大変稀少な在銘年紀入り短刀、寸法七寸七分弱、刃は総体的に繕ってあると思いますが、地鉄は備前物特有の素晴らしい鍛えです。
更に大変興味深いのが『備州長船近景』の銘振り、本作は嘉暦年紀ですので、前述したように、仮に太刀であれば、通常は『備前国長船住近景』と切ります。ただ本作は短刀であるため、銘を切るスペースが狭く、最も省略した形にしたとも考えられますが、僅少な短刀の銘振りを知る上でも貴重な現存品となるでしょう。コレクション価値の高い一振りです。


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