刀　近江守法城寺橘正弘(初代)
(おうみのかみほうじょうじたちばなのまさひろ)
鋭一振断之

Katana:Ouminokami Hojoji Tachibanano Masahiro

新刀・武蔵　江戸前期　業物
特別保存刀剣鑑定書付き

刃長：75.3(二尺四寸九分弱)　反り：0.8　元幅：3.03
先幅：1.94　元重ね：0.73　先重ね：0.57　穴：4(内2埋)

鎬造り、鎬高め庵棟尋常、切っ先やや詰まる。　鍛え、小板目に小杢目を交えて良く詰み、所々肌立ち、地沸微塵に厚く付き、地景繁く入り、地鉄良好。　刃文、湾れ調の刃取りで、刃中小互の目足が入ってやや沈み勝ちとなり、刃縁良く沸付いて匂い深く、金筋、砂流し掛かる。　帽子、直調で焼き深く、先掃き掛け返る。　茎生ぶ(僅かに区送り)、先浅い入山形、鑢目筋違い。　銅に金着せハバキ。　時代研磨。　白鞘入り。　

【コメント】
法城寺正弘は、滝川三郎太夫と称し、通説では本国但馬、『貞宗三哲』に数えられる法城寺国光の末裔で、その二十二代孫と伝わります。後に江戸へ出て法城寺一派を興しました。
活躍期は、承応(一六五二～五五)から寛文(一六六一～七三)頃で、門下には、二代正弘、貞国、吉次、正則、正照、国光、国正などがおり、作風は一派皆、直刃調に互の目が連れて交じる出来を得意とし、中には長曽祢虎徹を思わせるような数珠刃風の作もあります。また同派は、その鋭い斬れ味を以て良く知られており、特に正弘には、虎徹、大和守安定らと同様、山野加右衛門永久、勘十郎久英親子らの金象嵌截断銘もまま見受けられます。
本作は初代正弘の典型作、寸法二尺四寸九分弱、切っ先やや詰まり、反り浅めに付いた典型的な寛文新刀スタイルです。
地景が繁く入った強靱な地鉄、湾れ調で小互の目足が頻りに入った焼き刃は、刃縁が沈んで如何にも良く斬れそうです。
実際、茎裏には『鋭一振断之』とあるように、その斬れ味の鋭さを物語る截断切付銘が刻まれています。
地に少し緩みもありますが、地刃はすこぶる健全、法城寺一派の作で、截断切付銘入りは絶対に見逃せません。
江戸法城寺一派の棟梁、初代正弘の見所の多い逸品です。