刀 長船与三左衛門尉祐定(無銘)
(おさふねよさざえもんのじょうすけさだ)
Katana:Osafune Yosazaemonnojo Sukesada
古刀・備前 室町末期 最上作 大業物
保存刀剣鑑定書付き
探山先生鞘書き有り
刃長:63.7(二尺一寸強) 反り:1.6 元幅:2.96
先幅:2.15 元重ね:0.70 先重ね:0.54 穴3
【コメント】
本作は、大磨り上げ無銘ながら、『長船与三左衛門尉祐定』の極めが付された希少な一振り、重要美術品認定の同工代表作で、かの有名な山中鹿之介の愛刀を彷彿とさせる皆焼刃の傑作です。
数多輩出された末備前鍛冶の中では、祐定を名乗る刀工が特に多く、古刀期だけで八十余名を数えます。その中でも名実共に筆頭に挙げられるのが、本工の与三左衛門尉祐定です。
同工は、彦兵衛尉祐定の子で、応仁元年(一四六七)生まれ、年紀作に見る活躍期は、文亀(一五〇一~〇四)から天文十年(一五四一)頃まで、翌十一年、七十六歳で没と伝わります。
作風は、代表的な腰開きの複式互の目乱れを始めとして、直刃、湾れ、皆焼、互の目の先が割れて蟹の爪状になったいわゆる『蟹の爪刃』もあります。
本作は、典型的な末備前鍛冶の皆焼刃、鉄もきめ細かく綺麗で、地刃も明るく冴えています。
通常、無銘で末備前風の出来の場合、乱れ刃なら『長船祐定』、直刃調なら『長船清光』と極め、出来、状態によっては、単に『末備前』のみの極めで個銘まで入りません。
無銘で『与三左衛門尉』と個銘まで入れることは珍しいと思います。
これまで本誌でも同工の作を数十振り掲載しましたが、無銘で極まったものは初、因みに鑑定書は令和五年です。
探山先生鞘書きにも、『本作は、細緻なる小板目の肌合いに、得意の複式互の目乱れを焼き、更に棟焼き、飛び焼きを交えて賑やかな皆焼状を形成し、さながら山中鹿之介遺愛の旨の切付銘を添えた重要美術品の同工の刀を想起させるものがあり、同工の紛れもない優品也。』とあり、無銘ですが、最大限の褒め言葉を頂いています。
同工は名実共に末備前鍛冶の最高峰、故に本作は末備前の皆焼と見て、この上ない出来である証、四寸近く磨り上がっているかと思いますが、 この出来で生ぶ在銘なら、重要刀剣どころか、本歌の重要美術品に肩を並べるでしょう。兎にも角にもこれは名品、強くお薦めします。