刀 無銘(伝則重)
(でんのりしげ)
Katana:Mumei(Den Norishige)
古刀・越中 鎌倉最末期 最上作
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:66.2(二尺一寸八分強) 反り:1.0 元幅:3.02
先幅:2.21 元重ね:0.68 先重ね:0.45 穴3
【コメント】
則重は、五郎次郎と称し、佐伯姓を名乗り、鎌倉末期、越中国婦負郡(ねいぐん)呉服郷(現富山市五福付近)にて鍛刀したと伝わることから、呉服郷則重とも呼ばれます。古来より正宗十哲にもその名を連ねる、名工中の名工です。
作風は、正宗に近似しますが、沸の変化に於いては、正宗以上に良く示したものが多く、特に太い地景交じりの大板目肌が渦巻き状に肌立つ鍛えは『松皮肌』と称され、同工の代名詞にもなっています。刃文も直調に湾れ、互の目、互の目乱れなど様々、沸の働きが豊富で、たとえ無銘であっても、他に紛れることがありません。
数少ない年紀作に見る活躍期は、延慶(一三〇八~一一)から正中(一三二四~二六)頃、在銘品に太刀は極めて少なく、短刀の多い刀工で、『日本一則重』の号で呼ばれる国宝の短刀を始め、重要文化財八口、重要美術品十一口の指定品がありますが、その六割が短刀です。
本作は大磨り上げ無銘ながら『伝則重』の極めが付されています。
寸法二尺一寸八分強、反りやや浅め、身幅しっかりとした姿を示しています。
板目に大板目、流れ肌を交えて肌立つ地鉄は、地色にやや黒みがあり、地景繁く入り、直湾れ調で小互の目、小乱れを交えた焼刃は、刃中葉、小足頻りに入り、金筋、砂流しが烈しく掛かっています。 時代相応の研ぎ減り、地刃に鍛え肌等も見られますが、地のうねるような地景が松皮肌風を呈し、それが刃中に絡んで烈しい金筋、砂流しを形成するなど、沸出来の妙味が存分に発揮された同工らしい出来映えです。
物打ち付近の棟には、ズバッと深い刀疵が今も残っています。
『正宗十哲』、越中則重の典型作、幾多の戦乱を乗り越えて、今に受け継がれる名工の一振りです。