刀 (太刀銘)大和芳野山月山貞光
(花押)(人間国宝二代貞一初期銘)
(やまとよしのやまがっさんさだみつ)
昭和十三年一月吉祥日(一九三八)
Katana:Yamato Yoshinoyama Gassan Sadamitsu
現代・奈良
特別保存刀剣鑑定書付き
嫡子月山貞利(無鑑査)鞘書き有り

刃長:68.3(二尺二寸五分強) 反り:2.1 元幅:3.15
先幅:2.11 元重ね:0.71 先重ね:0.57 穴1
【コメント】
二代貞一は、月山昇と言い、貞勝の三男として、明治四十年、大阪市東区(現中央区)鎗屋町(やりやまち)に生まれました。大正七年に祖父初代貞一が没すると、僅か十一歳で、父貞勝より鍛刀を学び始めたと云います。大正十二年、十六歳の時に、大阪美術協会展に初出品初入選、最初期は、『月山貞光』と銘じています。昭和十年、鍛錬道場を奈良県吉野山、同十八年には、奈良県橿原(かしはら)市に移しました。この頃には『貞照』銘も見られます。昭和三十一年、『貴照』へ改銘、同四十年には、奈良県桜井市茅原(ちはら)にある、三輪山の麓、狭井(さい)川の畔に、『月山貞一鍛錬道場』を開設、同四十一年に『二代貞一』を襲名、同四十二年に『無鑑査』認定、同年から二年連続で『正宗賞』受賞、同四十五年に『奈良県無形文化財保持者認定』、同四十六年、『人間国宝』に認定されました。
門下には三男の貞利(無鑑査)、広島の三上貞直(無鑑査)、福岡の河野貞光、岐阜の二十五代兼房(貞房)を始め、その他多数の門人がいます。平成七年、八十七歳で没。
作風は、綾杉伝及び五ヶ伝を巧みにこなし、また兄弟子高橋貞次と並ぶ彫りの名手としても名高く、その特有の彫り口から『月山彫り』とも呼ばれています。
本作は、昭和十三年(一九三八)、同工三十一歳、貴重な貞光銘の現存作、前述したように、貞光は最初期銘、嫡子貞利の鞘書きに『先祖伝来綾杉以鍛法』とあるように、門外不出、月山綾杉伝の典型作です。
刃長二尺二寸五分強、反り深めの勇壮な太刀スタイル、大模様にうねる綾杉肌が判然と現れた精良な地鉄は、肌模様に沿って地景が良く働き、小互の目乱れ主体で小乱れ、尖り風の刃を交えた焼き刃は、綾杉鍛えが絡んで、刃中には煌めくような波状の金筋、砂流しが烈しく頻りに掛かっています。
また鞘書きにも『山桜之彫同作』とあるように、表裏腰元には、『朝日ににをふ(匂う)山桜花』の自身彫りがあります。
これは江戸後期、伊勢松阪の国学者、本居宣長が詠んだ余りにも有名な短歌、『敷島の 大和心を 人問わば 朝日に匂ふ 山桜花』の下の句だけを刀身に刻んでいます。
因みに、『敷島』とは日本の古称で、『大和』や『日本』という言葉の枕詞として使われます。また、この場合の匂うは、匂いがするのではなく、朝日を受けて桜が美しく映えていることを意味します。
ある時、『大和心』を問われた宣長は、『例えば、朝日に照り輝く芳しい山桜花の美しさに触れた時、言葉にならない感動が込み上げてくるような感受性の豊かな心である。』と答え、その意を込めてこの歌を詠んだとされています。
山桜花のみを図案化することで、その美しさがより際立つ配慮が成されています。
人間国宝月山貞一の希少な銘振り、月山一門の真骨頂とも言える美しい綾杉鍛え、月山彫り、特別保存鑑定に嫡子貞利の鞘書き付き、ある種大和魂を刀身に刻んだ究極のお守り刀、人間国宝月山貞一の初期の代表作です。






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