脇差し 村正(無銘)
(むらまさ)
Wakizashi:Muramasa
古刀・伊勢 室町後期
最上作 拵え付き
保存刀剣鑑定書付き
探山先生鞘書き有り
刃長:34.3(一尺一寸三分強) 反り:0.3 元幅:3.12 元重ね:0.55 穴2
帽子、突き上げるように湾れ込んで先掃き掛け長く返る。 茎生ぶ、先栗尻、鑢切り。 銅ハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
上脇差し拵え(近代作 全長53.5 鞘 黒石目鞘 こじり、四分一地無模様 栗型、鯉口、瓦金は角 小柄、赤銅魚子地据紋象嵌色絵、秋草図 柄 焦げ茶色裏革平巻き 縁、赤銅研磨地据紋象嵌、葵の葉に蟹の図 頭、赤銅槌目地、金線象嵌、雲龍図 出し目貫、金無垢丸形打ち出し模様目貫 鍔 鉄槌目地撫角形鋤出彫据紋象嵌色絵、鍾馗の図 銅に金着せハバキ 柄袋あり)付き。
【コメント】
遂に出ました妖刀村正、しかも最も人気の高い雄壮な平脇差し、生ぶ無銘なれど、見紛うことなき村正、地刃に覇気みなぎる会心作です。
愛刀家の方でなくとも、一般的に最も知られている刀工が千子村正であり、知名度は正宗、虎徹、清麿と同等です。
『抜けば血を見ずには治まらぬ』と云われる村正は、特に徳川家に多くの禍をもたらしたことから、徳川家に忌み嫌われ、妖刀、怪刀と恐れられ、江戸時代には大名、旗本も所持することを禁じられたと伝わっています。又反対に、徳川家に恨みを持つ外様大名らは、銘を消したり、『廣正』、『正廣』など相州鍛冶銘に改鏨するなどして秘かに愛用、特に幕末期には、徳川家に祟るとの伝説から勤皇の志士達に好まれ、人気を博したとも云います。
そして何と言っても万人を魅了して止まないのは、その凄まじい斬れ味、江戸時代に作られた業物位列には、徳川家にはばかり、位列には入れられていませんが、虎徹と同等かそれ以上、間違いなく最上大業物にその名を連ねる刀工です。
同銘が数代に渡っていますが、特に初二代が有名で、初代を文亀、二代を天文頃としています。初二代の代別は、その銘振り、作風、茎仕立て等によって明確に区別することが出来ます。
とにかく偽物が多いことでも有名なのが村正、正宗でも虎徹でも、偽物が多いのは人気のバロメーターとなりますが、間違いなく村正が最も多いかと思います。
本作は生ぶ無銘ながら『村正』と極められた平脇差し、寸法一尺一寸三分強、身幅広く何とも力感溢れる優品です。
板目、杢目、棟寄りに流れ肌がザングリと肌立つ地鉄は、地沸を厚く付け、地景をふんだんに配した鍛えで、箱掛かった刃を主体に互の目、湾れ、尖り風の刃を交えた刃文は、表裏良く揃い、焼きに高低があり、刃沸強く、刃縁所々沸崩れて、刃中金筋、砂流しが掛かっています。
探山先生鞘書きにもあるように、姿、鍛え、刃文、茎仕立て等、全てに於いて二代村正の特色が明示された典型作です。
これぐらいの寸法の平脇差しは、二代の得意とするところ、村正中最も人気のある造り込みです。これまでも無銘極めの村正は幾つか掲載しましたが、これは群を抜いています。この出来でこの状態、在銘ならば大変なことです。疾うの昔に重要になっているでしょう。
付属の外装も決して付け足りではなく、見逃せない逸品、特に金無垢丸形の出し目貫は、江戸期の金貨である一分金、二分金のデザインを打ち出した大変ユニークな作、鞘もスマートで何ともお洒落な作です。
もはやこれは絶対に押さえなくてはならない村正、強くお薦め致します。