薙刀　備前国福岡住左兵衛尉（以下切れ）（長則）
（びぜんのくにふくおかじゅうさへいのじょうながのり）

Naginata:Bizennokuni Fukuokaju Saheinojo Naganori

古刀・備前　鎌倉後期
第三十回重要刀剣指定品
探山先生鞘書き有り

刃長：33.3（一尺一寸弱）　反り：1.0　元幅：2.36　元重ね：0.62　穴1

　薙刀造り、鎬高め三ッ棟低い。　表裏腰元から茎に掛けて薙刀樋有り。　鍛え、板目に大板目、流れ肌を交えて上品に肌立ち、地色明るく、映り判然と立ち、地景繁く入り、地沸微塵に厚く付き、地鉄概ね精良。　刃文、直調で、刃縁匂い勝ち小沸付いて締まり気味となり、刃中僅かに逆掛かる小丁子、小互の目足入る。　帽子、直調で先焼き詰める。　茎磨り上げ、先切り、鑢切り。　銅に金着せ二重ハバキ。　時代最上研磨。　白鞘入り。

【コメント】
　備前福岡一文字長則の重要刀剣薙刀、同派中唯一銘文に『福岡住』と刻する刀工による、上品で美しい鎌倉薙刀です。
　長則は、名門備前福岡一文字派の最後を飾る刀工で、左兵衛尉と称し、現存する年紀作には、永仁六年（一二九八）、正安二年（一三〇〇）、正安三年（一三〇一）、正安四年（一三〇一）などがあり、その活躍時期は明確です。
　同派は、後鳥羽院番鍛冶の則宗を祖とし、備前福岡の地で鍛刀しましたが、実際銘字に『福岡住』と切り添えた作が残されているのは、本工の長則のみです。
　作風は、同派最盛期に見られる華やかな丁子は見られず、細身の雅やかな太刀姿、直刃調に小丁子、小互の目足、直足交じる穏やかな出来が大半です。ほぼ同時期に活躍した長船長光の晩年作、弟の真長を思わせるような出来かと思います。
　銘は『備前国福岡住左兵衛尉長則（造）』などと切ります。
　本作は、長則の在銘重要刀剣、昭和五十八年、第三十回の指定品です。
　寸法一尺一寸弱、細身の上品な鎌倉薙刀で、四寸程磨り上がっており、茎尻右下に僅かに残っているのが生ぶ穴の痕跡かと思います。
　鎌倉期の薙刀には、南北朝期のように、切っ先が強く張って、先反りの深い長大なものはなく、寸法も一尺五寸から七寸位が大半です。また鎌倉期の薙刀は、南北朝期のものに比べ圧倒的に数が少なく、加えて在銘品となれば、かなり珍重されます。
　本作は『備前国福岡住左兵衛尉』で以下切れとなっており、少し茎も荒れていますが、福岡一文字長則の貴重な在銘品、且つ典型作優品です。
　板目にうねるような大板目、流れ肌を交えて上品に肌立つ美しい備前地鉄は、地色明るく、映り判然と立ち、地景繁く入り、地沸が微塵に厚く付いています。　直調の穏やかな刃文は、刃縁匂い勝ちに小沸付いて締まり気味となり、刃中僅かに逆掛かる小丁子、小互の目足が入っています。　
　長光の子である景光、その弟弟子の近景を思わせる出来で、地に少し鍛え等もありますが、鞘書きにも『同工の典型的な出来を示す優品也。』とあるように、鎌倉期の上質な備前物の美点が存分に示された一振り、福岡一文字長則の貴重な在銘薙刀、これは何とも渋く、且つ味わい深い逸品です。