太刀 重恒(古備前)
(しげつね)


Tachi:Sigetsune



古刀・備前 鎌倉初期
第二十回特別重要刀剣指定品
元禄八年本阿弥光常折紙付き 探山先生鞘書き有り
大和国郡山藩主柳沢家伝来品 『刀剣美術』所載品




刃長:71.6(二尺三寸六分強) 反り:2.6 元幅:2.71
先幅:1.81 元重ね:0.62 先重ね:0.47 穴4




鎬造り、鎬尋常庵棟低い、小切っ先。 表裏共に棒樋を茎途中で掻き流す。 鍛え、小板目に板目、杢目を交えて良く詰み、所々上品に肌立ち、地斑状に映り立ち、地沸微塵に厚く付き、細かな地景繁く入り、地鉄概ね精良。 刃文、直湾れ調で小丁子、小互の目、やや角張ったような刃を交え、刃区付近のみ腰刃風に深く焼き込み、刃縁沸匂い深く明るく冴え、刃中小足、葉、丁子足繁く入り、金筋、砂流し掛かる。 帽子、湾れ調で沸付き、先焼き詰める。 茎磨り上げ、先栗尻、鑢切り。 金無垢二重ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。



【コメント】
古備前重恒の特別重要刀剣太刀、鎌倉初期、正恒門人と鑑せられる同工稀少な現存作、元禄八年本阿弥光常折紙付き、大和国郡山(こおりやま)藩主柳沢家伝来品、『刀剣美術』所載品です。
古備前とは、平安末期から鎌倉初期頃に掛けて備前の地に興った刀工群、及びその作刀の総称で、鎌倉中期頃までその活躍が見られます。三条宗近と同時代とされる友成、最も現存作の多い正恒を始め、信房、助包、恒光、真恒、吉包、利恒、重恒、『備前三平』と呼ばれる高平、包平、助平などがその代表工に挙げられます。
同派の一般的な作風は、腰反り高く踏ん張りがありながら、先へ行って伏せ気味となって小峰に結ぶ太刀姿、板目に細かな地景を交えて乱れ映り立つ鍛え、直刃若しくは浅い湾れを基調とした焼き刃は、刃中小乱れ、小丁子、互の目を交えて、刃沸良く付き、刃中金筋、砂流し掛かる出来が大半で、華やかに乱れるものはほとんど見られません。
本作は古備前重恒の希少な在銘太刀、昭和二十六年(一九五一)三月の東京都登録で、平成二年(一九九〇)に第三十六回重要刀剣、平成二十年(二〇〇八)に第二十回の特別重要刀剣に指定されています。
寸法二尺三寸六分強、小切っ先で腰反り深く踏ん張りのある優美な太刀姿で、地刃健全、手持ちしっかりとした重量感があり、茎中央棟寄りには、古拙ながら何とも味わいのある小振りの二字銘が残されています。
重恒は、銘鑑等によると、活躍期を鎌倉中期に差し掛かった建長(一二四九~五六)頃としていますが、この姿、雰囲気からして実際はもっと古く、鎌倉初期は下らないと確信します。
現存する在銘品は、本作以外に重要美術品の太刀二振り、重要刀剣の太刀一振りのみで、銘は『重恒』若しくは『重恒作』と切り、『恒』の偏(へん)は、『忄』ではなく『十』のように切ります。 小板目に板目、杢目を交えて良く詰んだ地鉄は、所々上品に肌立ち、地斑状に映り立ち、地沸微塵に厚く付き、細かな地景繁く入っています。
直湾れ調の焼き刃は、小丁子、小互の目、やや角張ったような刃を交え、刃区付近のみ腰刃風に深く焼き込み、刃縁沸匂い深く明るく冴え、刃中小足、葉、丁子足繁く入り、金筋、砂流しが掛かっています。
重恒太刀の見所である腰刃、本作では刃区をまたぐように焼きが深くなっており、丁度ハバキ下に隠れる位置です。ただ二、三寸程磨り上がっているため、生ぶであれば、腰元に大きな乱れがあったものと思われます。通常古備前、古青江、古京物など、平安末期から鎌倉初期の作では、腰元の焼きは低くなるものが多い中、重恒の太刀はどれも腰刃の目立つ点が大きな見所で、前述した重要美術品の太刀には、はっきりとした大きな腰刃が焼かれています。
探山先生鞘書きには、『地刃の出来、古調な太刀姿等、作風的に正恒に近似しており、恒の字を使用していることなどからも正恒門人と見られ、時代も鎌倉初期まで上がるものと鑑せられる。』とあります。因みに正恒にも腰刃の作例があります。
特筆すべきは、本刀は大和国郡山(こおりやま)藩主柳沢家に伝来した由緒正しき一振りであることです。
郡山藩は、大和国に存在した藩で、藩庁は郡山城(現奈良県大和郡山市)に置かれました。享保九年(一七二四)、八代将軍徳川吉宗の『享保の改革』に於ける幕府直轄領拡大に際し、吉宗の命により、甲斐国甲府藩から柳沢吉里(柳沢吉保の嫡男)が十五万石で入って以降、幕末まで同家が治めました。
『大和郡山柳沢家刀剣目録』にも本刀に付いての記載があり、白鞘に一部残る古い鞘書きは、郡山藩のお納戸役(将軍家、大名家に於ける下賜品、献上品、贈答品等の管理役)の文字です。大和郡山柳沢家は、藩の創立が江戸中期と歴史が浅いにもかかわらず、『刀剣目録』を見ると、十五万石の大名の蔵品とは到底思えない名品が目白押しですが、五代将軍綱吉の寵愛を一身に受けていた父吉保の時代から、将軍家の名刀を惜しげもなく拝領していたと考えれば、なるほどと頷けます。
また図譜にも記載があるように、元禄八年(一六九五)、十二代本阿弥光常による折紙が付属しており、『代金子十枚』の代付けが成されています。
本阿弥光常は、本阿弥本家十二代当主で、十一代光温の孫に当たります。折紙は寛文七年(一六六七)~元禄九年(一六九六)まで残されており、宝永七年(一七一〇)、六十八歳没。
本阿弥本家の折紙でも、十三代光忠までのものは、鑑定が厳格で信用が置けるため、『古折紙』又は『上折紙』と呼ばれ珍重されます。更にその中で十二代光常、十三代光忠による元禄期のものは、『元禄折紙』と呼ばれ、最高権威とも言われています。
更に平成二十五年(二〇一三)、『刀剣美術』三月号の鑑定刀であり、同年十一月号の『名刀鑑賞』掲載品です。『名刀鑑賞』と言えば、刀剣美術では毎回恒例、最初にある折り畳みページの刀剣です。刀剣美術にも『あたかも正恒を彷彿とさせ、古調さと共に品格も兼ね備えた作柄で、現存作は少ないながらも、卓越した技量の持ち主であったことが窺われる。同時に古備前鍛冶全体の技量の高さ、規模の大きさを知る上でも貴重な資料となる。』とあります。
前述した重要美術品は生ぶ茎ですが、正直、焼きの深さと刃の健やかさは、本作が勝っています。
この寸法、出来、健全さに加えて、伝来、折紙、『刀剣美術』所載品となれば、もう言うことはありません。
同工のみならず、古備前鍛冶の代表作として受け継がれるべき名刀、素晴らしい古備前重恒、自信を持って強くお薦め致します。




















【売約済】商品番号:V-1941 太刀 重恒(古備前) 第二十回特別重要刀剣指定品 元禄八年本阿弥光常折紙付き 探山先生鞘書き有り 大和国郡山藩主柳沢家伝来品 『刀剣美術』所載品

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