大太刀 奥大和守平朝臣元平
(おくやまとのかみたいらのあそんもとひら)
享和三癸亥春(一八〇三)
Otachi:Okuyamatonokami Tairano Ason Motohira
新々刀・薩摩 江戸後期 木箱付き
特別保存刀剣鑑定書付き
本阿弥光遜及び月山貞一鞘書き有り
薩摩藩島津家伝来品及び照国(てるくに)神社奉納刀
刃長：98.0(三尺二寸三分強) 反り：3.5 元幅：3.43
先幅：2.20 元重ね：0.72 先重ね：0.54 穴2(内1忍)
【コメント】
奥元平による寸法三尺二寸三分強の大太刀、薩摩藩島津家伝来品で、後に第十一代藩主島津斉彬公を祀る照国(てるくに)神社に奉納された名品です。
元平は孝左衛門と言い、延享元年(一七四四)、奥元直の長男として生まれました。父に鍛刀を学び、安永六年(一七七七)に家督を相続、天明五年(一七八五)頃に薩摩藩工となり、寛政元年(一七八九)には『大和守』を受領、十一歳年配の伯耆守正幸と共に、薩摩新々刀鍛冶の双璧を成した名工です。
会津元興、備前横山祐平、尾張青木元長等々、全国各地の名工達が元平に学んでいることからも、その名声の高さが伺えます。
作刀は、明和(一七六四～七二)から文政(一八一八～三〇)頃まで見られ、文政九年(一八二六)、八十三歳で没。
作風は、互の目乱れに小湾れ、尖り風の刃を交えた焼き刃を主体とし、刃縁の匂い深く荒沸付き、金筋、砂流し掛かるなど、相州伝を得意としています。
銘は、最初『薩陽士元平』、薩摩藩工となった天明五年頃からは『薩藩臣奥元平』、寛政元年の『大和守』受領後は、『奥大和守平朝臣元平』と切る場合が大半です。
本作は享和三年(一八〇三)、同工六十歳の頃、円熟期に於ける寸法三尺二寸三分強の大太刀です。
小板目肌総体的に良く詰み、所々流れ心に上品に肌立つ精良な地鉄は、細かな地景繁く入り、小互の目乱れを主体に、やや尖り心の刃、湾れを交えた焼き刃は、刃縁やや沈み勝ち詰みに締まり、刃中小足、葉入り、金筋、砂流し掛かるなど、一見して鉄質の良さが伝わってきます。
本作は、薩摩藩島津家伝来品、第十一代藩主島津斉彬や天璋院(篤姫)の祖父、第九代藩主島津斉宣の時代に作らせた注文打ちで、後の元治元年十二月十九日(一八六四)、第十二代藩主島津忠義が照国(てるくに)神社に奉納した大太刀です。
忠義は同藩最後の藩主、斉彬の弟の長男で後に養子となって跡を継ぎました。照国神社は、鹿児島市照国町に鎮座する鹿児島で最も大きな神社で、安政五年に亡くなった斉彬の功績を讃えて創建され、斉彬を御祭神として祀る神社です。社名は、文久三年(一八六三)、孝明天皇から斉彬に『照国大明神』の神号が授けられたことに由来しています。
箱書きにも、本作が島津忠義によって、義父斉彬を祀る照国神社完成記念として奉納された旨が記されており、また昭和十八年に本阿弥光遜、昭和六十年には人間国宝月山貞一がその旨を鞘書きしており、更に貞一が『相州伝以秘術製作された力作の大太刀である。』などと記した添え状まで附帯しています。
昭和六十年に特別保存鑑定を取得し、その記念に月山貞一に鞘書き等を依頼して以降、何処にも出ていない超激生ぶ品、保存状態が良く、茎もサビが付き始めで現代刀のようです。
これだけの長寸ながら破綻のない地刃の出来は、同工の高い技量が窺える超大作であり、且つ由緒正しき島津家伝来品、こんな元平は見たことがありません。もう次はありません。
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