刀　片山一文字(無銘)
(かたやまいちもんじ)

Katana:Katayama Ichimonij(Mumei)

古刀・備前　鎌倉後期
第六十三回重要刀剣指定品
探山先生鞘書き有り

刃長：68.1(二尺二寸五分弱)　反り：1.9　元幅：2.86
先幅：1.81　元重ね：0.70　先重ね：0.51　穴4

鎬造り、鎬高め庵棟低め、小切っ先。　表裏共に棒樋を掻き通す。　鍛え、小板目に板目を交えて肌立ち、地沸厚く付き、地色明るく、地景入り、乱れ映り立ち、地鉄概ね精良。　刃文、表の物打ち、裏の腰元付近は焼き刃高く、中程は直湾れ調で小丁子、小互の目を交え、刃縁匂い深く明るく冴え、刃中小足、葉頻りに入り、一部繊細な砂流し掛かり、地に湯走り、飛び焼き断続的に入る。　帽子、乱れ込んで先丸く返る。　茎大磨り上げ、先切り、鑢切り勝手下がり。　銅に金着せ二重ハバキ。　時代最上研磨。　白鞘入り。　

【コメント】
片山一文字(無銘)の重要刀剣、乱れ映り判然と立つ地鉄、健やかで明るく変化に富んだ焼き刃等々、同派の魅力を存分に示した一振りです。
片山一文字派は、福岡一文字助房の子と伝わる則房が、後に片山の地に移住したことからこの呼称があり、最盛期は鎌倉中期から末期とされます。また古来より片山の地を備中片山、現在の岡山県総社(そうじゃ)市地頭片山としていましたが、近年の研究では備前福岡近辺の片山、現在の岡山県瀬戸市邑久(おく)町下笠加(しもがさか)が有力視されています。
則房には、国宝二口、重要文化財一口、重要美術品七口が残されており、在銘現存作は太刀のみ、また古来より薙刀の名手とも伝えられています。無銘極めの片山一文字に薙刀、薙刀直しが多いのはこのためです。
作風は、福岡一文字助真、吉房に類する華やかな丁子乱れの他に、地沸が微塵に付いて強く冴えたもの、逆心の刃が目立つもの、小模様な丁子乱れのものなどがあり、刃中の足が細かく入り、刃縁が良く冴える点も見所です。
本作は平成二十九年(二〇一七)、第六十三回の重要刀剣指定品、寸法二尺二寸五分弱、姿美しく、地刃健やかな同派典型作優品です。
乱れ映り鮮明に立つ地鉄、刃文は、表の物打ち、裏の腰元付近は焼き刃高く、中程は直湾れ調で小丁子、小互の目を交え、刃中逆足、小足、葉頻りに入り、一部繊細な砂流し掛かり、地に湯走り、飛び焼きが断続的に入っています。
探山先生鞘書きには、『小模様で変化に富み、逆心を帯びる刃文、乱れ映りなど、鎌倉後期の同派の特色を示す優品也。』とあり、図譜には、『この刀は、焼き刃に逆掛かる状が見られ、刃中の小足が良く入る点に同派の見所が窺われ、湯走りや飛び焼きが、刃縁のみならず、地まで断続的に頻りに掛かり、部分的に焼きが高くなるなど、変化に富んだ独特な景色を見せている。』とあります。
大変魅力的な片山一文字、地刃健全、同派盛期に於ける見所が随所に示された自信作です。