刀 石州直綱(無銘)
(せきしゅうなおつな)
(附)朱塗鞘庄内刀拵
Katana:Sekishu Naotsuna(Mumei)
古刀・石見 南北朝期 正宗十哲
第二十四回重要刀剣指定品(昭和五十一年)(一九七六)

刃長:72.0(二尺三寸八分弱) 反り:1.6 元幅:3.00
先幅:1.95 元重ね:0.70 先重ね:0.42 穴2

上打ち刀拵え(幕末期 全長101.5 柄長24.2 鞘 朱鞘に紅葉散らし模様研ぎ出し蒔絵 紅葉部分は黒地に螺鈿蒔絵 下げ緒、金茶と青鼠色の変わり組 こじり、銘大泉住 船田一琴 義守花押 鉄地毛彫に金銀平象嵌、紅葉散図 柄 親鮫卯の花柄巻き 縁頭 銘華明庵宗和 天保十三年壬寅十一月 素銅研磨地鋤出高彫象嵌色絵、牡丹獅子に蝶の図 目貫、赤銅容彫色絵、菊紅葉図 鍔 銘船田一琴花押 鉄地丸形鋤出彫金銀象嵌、赤銅覆輪 月下老梅図)付き。

【コメント】
石州直綱(無銘)の重要刀剣、『正宗十哲』の名に恥じない烈しい地刃の出来、出羽国庄内藩酒井家筆頭家老の差し料と伝わる由緒正しき伝来品です。
中国山地という良質な砂鉄生産地域を持つ石見国では、古来より武器、輸出品としての刀を多く生産してきました。主な産地が島根県中部の山間にある出羽(いずわ)の地であり、ここで採れる出羽鋼は、兵庫県の千種鋼と比肩する和鋼、玉鋼の最高級銘柄です。
この地で鍛刀したのが、石州直綱一派、通説では『正宗十哲』とされる直綱を筆頭に、子に貞綱がいます。
同派の作風は、互の目乱れを主体とし、小互の目、丁子、尖り風の刃、角張る刃、腰開きの刃等を交え、互の目が目立って連なる場合もままあり、地刃の沸が強く、刃中金筋、砂流し頻りに掛かるなど、南北朝期に最盛期を迎えていた相伝備前の覇気ある作風を得意とします。
本作は、大磨り上げ無銘ながら『石州直綱』と極められた優品で、昭和五十一年(一九七六)、第二十四回の重要刀剣指定品です。
寸法二尺三寸八分弱、身幅、重ねしっかりとした勇壮なスタイルで、総体的に地刃健全です。
板目に杢目、流れ肌を交えた地鉄は、地景を伴って所々大模様にうねるように肌立ち、互の目乱れを主体に、小互の目、丁子風の刃を交えた刃文は、刃縁烈しく沸付いて明るく冴え、刃中互の目足、葉入り、金筋、砂流し頻りに掛かるなど、同派の典型的な作域が存分に示された会心の一振りです。
尚、鞘書きによると、本刀は出羽国庄内藩酒井家の筆頭家老で、幕末期には江戸見廻り組総大将なども務めた、松平権十郎親懐(ちかひろ)(一八三八~一九一四)の差し料であった旨が記されています。
更に本刀は、幕末当時のオリジナル朱塗鞘庄内刀拵と共に重要刀剣に指定されており、金具類なども、船田一琴義守を始めとする在銘品で揃えた超一級品です。鞘の色合い、蒔絵などの雰囲気も抜群に良いです。
石州直綱典型作、伝来、オリジナル拵え付属と三拍子揃った素晴らしい逸品、これだけピシッと整った作は、中々お目に掛かりません。強くお薦めします。



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