刀 備前介藤原宗次作
(びぜんのすけふじわらのむねつぐさく)
応阿州臣正木利啓需 万延元年八月日(一八六〇)
Katana:Bizennosuke Fujiwarano Munetsugu
新々刀・武蔵 江戸最末期
第三十回重要刀剣指定品

刃長:72.0(二尺三寸八分弱) 反り:2.1 元幅:3.25
先幅:2.31 元重ね:0.81 先重ね:0.58 穴1
【コメント】
備前介固山宗次の重要刀剣、特注による入念作、阿波国蜂須賀家重臣、正木文太郎利啓の愛刀であった由緒正しき伝来品です。
宗次は、享和三年(一八〇三)、奥州白河に生まれ、水心子正秀門であった米澤藩工加藤綱英に鍛刀を学びます。文政十二年(一八二九)まで白河、翌年主家松平家に従って桑名へ移りました。桑名滞在は僅か一年余り、大半は江戸麻布、四谷で鍛刀しました。弘化二年(一八四五)に『備前介』受領、没年は不明ですが、作品は文政後半から明治四年頃まで残っています。
大業物鍛冶としても名高く、試し斬りの名人、七代山田浅右衛門吉利らに指導を受け、斬れる刀を探求しており、截断切り付け銘の入った作もまま見受けられます。新々刀期に於いて最も成功した鍛冶の一人であるため、大名や当時の著名人の注文打ちも多く見られます。
作風は自ら求めて『備前介』を受領していることからも分かるように、一貫して備前伝、良く詰んだ精良な鍛えに、匂い深く明るい互の目交じりの丁子乱れを焼き、その美しさから、世上、『宗次丁字』と呼称されます。
本作は、昭和五十八年(一九八三)、第三十回の重要刀剣指定品、同工五十八歳の頃の作、寸法二尺三寸八分弱、反りやや深めで姿美しく、身幅、重ねガシッとして、手持ちズシッときます。地刃は無類の健全さを誇っており、とにかく刀が重いです。
地沸微塵に厚く付いて細かな地景入る精良な地鉄、互の目乱れ主体の焼き刃は、丁子風の刃、角張った刃を交えて焼きの間隔詰まり、刃縁明るく締まり、刃中太く長い互の目足頻りに入るなど、地刃共に明るく冴え渡っています。
茎に刻された注文主『阿州臣正木利啓』は、『蜂須賀家家臣成立書並系図』等によると、阿波国徳島藩十三代藩主、蜂須賀斉裕に仕えた正木文太郎利啓のこと、正木家七代目当主であり、藩主の御刀係なども務めています。
研ぎ減りを微塵も感じない現代刀の様な健全さ、それが新々刀重要の醍醐味です。
また研ぎも良く、宗次丁子の柔らかさと華やかさが存分に示されている名品、自信を持って強くお薦め致します。





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